写真の紙の上につけられた数百のスリット。
日中深夜、時間を忘れてカッターの刃を紙に沈ませる時、私は自分の指が、自分のものでありながら自分のものでないような気がします。一つ一つの切れ込みはクロスしてしまうと紙が崩壊してしまうので、慎重に、しかし着実に一本一本カッターの刃を入れていきます。何十、何百と切れ込みを入れていく中で、いつしか指は私のコントロールを抜けて新しい美を作っているように感じました。それは自分自身のオリジナリティーを発見することと同義でもありますが、私の脳の小さな世界を超えて、世界を拡張するような、そんな可能性を感じさせてくれることが何よりも嬉しかったです。パリに住んで5年。ここで個展や展示をしていますが、新しい世界があることを教えてくれたのは私にとっては指でした。
この新しい本は、私の最前線の表現であり、また、同時に今だからこそ伝えられる物語があると思います。色々な思いが重なりますが、ただただ、この本を世に出すために力を頂けたら幸いです。
初めましてはじめまして、澄毅(すみたけし)と申します。
現在パリで写真家、美術家として活動しています。
京都の出身です。祖父が手が器用な人で、子供の時から与えられた竹を彫刻刀で彫っていました。高校の時は学校が京都の歴史地区に位置していたので、折々にお寺や神社を回る中で美意識を形成してきました。一方で当時は作家になる気は全く無く、大学卒業後は一般企業に就職しました。しかし働く中で自分を振り返った時に子供から親しんだ美術で何かをしたいと思い予備校に通い、結局、美術大学に1年生から再入学。26歳という遅めのタイミングで美術の世界に足を踏み入れました。在学中は色々挫折をしましたが、写真の登竜門的な公募展に入賞したことが進路を決めました。卒業後は芸術家の工房で仕事をさせて頂いたり、時には出版社で秋葉原のメイドカフェを取材し、時には人の死に関係するような仕事などをしました。
転機になったのは2012年、初めての写真集「空に泳ぐ」を出版した時です。出版記念で出品したパリのアートフェアでAgnès Bの購入を受けて作品がコレクションに加えられた時でした。当時30代の初めで、日本ではない場所で作品制作がしたいという思いから、2013年からパリで生活をしています。
藤田嗣治やピカソ、モディリアーニ。。パリで活躍した芸術家の多くは異邦人でした。自分が同じように異邦人としてパリにいる中で突きつけられたのは「自分は一体何が人とは違うのか」という事でした。人と同じものを作るなら私でなくても良い、というシンプルな現実はとても厳しく、それまでの作品スタイルとは全く異なる世界観を提示する必要に迫られました。ここでもう一度自分を振り返ったのですが、私は抜きんでるほど頭が良いわけではない、学歴がすごいわけではない、凄い芸術家の弟子というわけでもない。。色々な自分の弱さを突きつけられる中で、私を救ってくれたのは指でした。
静かな深夜や日中、カッターで1mmにも満たない感覚でスリット(切れ込み)を入れる作業をしています。スリットはクロスしてしまうと紙が崩壊してしまうので、慎重に、でも伸び伸びと入れていきます。それは大変ではありますが、新しい世界が出現する感覚を味わえる時でもあります。今回の本では、このスリットを入れた写真に加え、フイルムカメラで多重露光という技術を用いたモノクロの作品も制作しています(詳しくは後述)。またこの本をまとめるにあたって、ずっと発表しなかった写真も入っています。
いろいろな要素が重なって、一つの物語を織りなすことができるのは私が本の作成をしたいと願う理由です。
なぜ本なのか?紙で残したい!!本を出したい気持ちはずっとありましたが、一番大きなきっかけは昨年直木賞を受賞された島本理生さんの小説「匿名者のためのスピカ」の文庫本の表紙に作品が起用されたことでした。彼女の深く美しい物語の一端に関われたことで、改めて自分も本を出したい!!!という気持ちが高ぶりました。
紙は普通は1ミリに満たない厚みのものですが、私は写真がこのか弱い支持体に印刷された姿が好きです。
うまく言えませんが、世界がそんな紙に印刷された姿を観るたびに嬉しく感じます。
本を開き、指先から紙の質感を感じ、ページをめくるたびに目を開く世界はどこまでも遠くの世界に観る人を連れて行ってくれます。
紙は寿命が長いです。例えば私の子供の時はVHSビデオが全盛期で、あの時は15年くらいでほとんどVHSが見れない環境が来るなんて想像もしていませんでした。本はそれ自体が再生機でもあるので、寿命が長いです。気に入ってもらえたら、5年10年、100年生きれるかもしれない。社会環境や技術がどう変わろうと、本は読み続けることができます。今も楽しんでほしいですが、数年後に改めて手に取った時にまた発見があるような、そんな本にできたらと考えています。
どんな本になるのか色々な物語がこの本には詰まっています写真たちが織りなす物語。それをぜひ手にとって観て頂きたいと感じています。
スリットを入れた作品を作っていて、自分の世界に気づかされることが沢山ありました。私はもともと斜視という障害を持っています。普段は意識しませんが、疲労が溜まった時などは焦点が合づらい、ものがダブって見えそうな時があります。その時に感じたのが、2つの目がそれぞれ違う世界を見ているという事でした。自分の二つの目でさえ違うものを見ているのだから他の人の見る世界もまた違う。それは、私にとっては恐れでした。こうして見ている世界が「確かなもの」でないと突きつけられたように思えたからです。
そうした、視覚で見る世界の不確かさの中で、指が私を導いてくれました。
写真がプリントされた紙を触り、押さえ、もう一つの手でカッターの刃先をゆっくり紙に沈ませていく。
それを何百、何千回としていきました。そうしてできたスリットは波のようでもあり、神経が紙先に伸びたような感覚を受けました。それは私にとって視覚では感じられなかった「確かなもの」と言えるものでした。そのスリットを入れた紙を太陽の陽射しにかざす時、スリットに美がやどり、新しい世界が生まれた様に感じます。
出版社やデザイナーは?写真集専門の出版社、リブロアルテから出版を予定しています。
本のデザインは高見清史氏。色々な分野のデザインで活躍されている方です。
最近だとヴェネチアビエンナーレに出品された塩田千春さんの本やWEBを担当されています。
前回の写真集「空に泳ぐ」も担当して頂きましたが、信頼できる仕事をして頂きました。
本のサイズはA4を予定しています。詳しい概要については追ってご報告致します。
本の良さは寿命が長いことがありますが、出版社やデザイナーなど、作家に留まらない本に世界が入ってきます。
それらが混じり合い、紙という媒体だからできる表現に到達できることがとても嬉しいです。
人は代わり、美も変わっていきますが、本にすることでその美しさを残せたらと思います。
価値のある本にしたい今回、本は全てサインをお付けします。そして今回Kibidango独自の特典がその世界をより広げてくれます。
この本が出て、5年後、10年後にも価値があるよう、物語が生き続けるように、それが叶う内容とデザイン、印刷を実現したいと思います。
「指と星」の物語をもう少し小説のように本全体の物語をページをめくっていくごとに知る時の楽しさと、画集のように一枚一枚のビジュアルの世界の引き込まれることの二つの楽しみ。写真集にはその二つの魅力があると思います。
この写真集にはスリット以外の作品も沢山収録されています。このモノクロのシリーズがそうです。
写真がプリントされた紙に穴を開けて太陽にかざし、穴から溢れでてくる光を撮る。それを1回、2回、3回と、写真がもう良いと伝えるまでシャッターを押すことを繰り返します。「多重露光」という技術で、フイルムは巻き上げないでなんども撮影することで、一枚の写真の中に複数の光が現れ、それは銀河のように広がっていきます。浮かび上がってくるプリントを見た時、強く存在する光の一方で被写体は重なり、固有性を失っていく中で本質といえるものが浮かび上がってきます。
モデルのポートレイトや家族、東京の街など、いつも見慣れているはずの存在が光を宿すことで生まれた世界。
この写真には、冬の日中、陽光を浴びる中で暖かさに溶けていくような、そんな感覚があります。
伝えきれない物語はぜひ本を手に取って観てくださいこの本の出版プロジェクトは、何かのチャリティーや公益性を図るものではありません。
また、最新技術のプロダクトを誇るものでもありません。
しかし指やセンスという、とてもアナログなものを研ぎ澄まして研ぎ澄ました先に、まだこんな新しい世界が広がっているのだと、私はこの本で提示できると感じています。そして、観る人それぞれの「何か」に必ず響き合ってくれるものがこの本にはあります。
特典(リワード)今回Kibidangoでクラウドファウンディング をするにあたって、限定特典を用意しました!
主な特典をご紹介します。
A1ポスター&写真集未収録作品のポストカードご支援いただいた方すべてにA1サイズの作品のポスターとポストカードをプレゼントします。
ポスターの作品はもともと大きいサイズの写真プリントにスリットを入れていたものなので、ポスターにすると一本一本の線の流れがほぼ原寸大で確認して頂けます。
ポストカードには写真集に収録されていない作品の写真が印刷されています。今回写真集を作るにあたって厳選に厳選を重ねましたが、ページの関係で収録できなかった作品が何点かあります。そちらをポストカードという形で写真集の世界を補足する形でご覧いただけたら幸いです。
1対1の写真レッスンパリや日本で写真や表現についてレッスンを行います。私は自分自身がもともと美術系ではなく、また表現もいろいろな表現を経てここにきた関係で、「何が自分の強みであり、自分がしたいことをどの様に活かすことができるのか」を常に言語化してきました。レッスンではこれまでの経験を活かして、できるだけそれぞれの方の気持ちや経験、方向性を活かせる様なアドバイスををできたらと思います。レッスンは1対1で行います。考えやフィロソフィーなど、考えの部分を把握してそこから課題を出し、最終的に一つの表現に到達できるように進めていけたらと思います。
オリジナル作品自体が入ったセットをご用意しました!今回、Kibidangoの特別な待遇で作品もお渡しするセットを設けました。
これまでに内外で多数のアートフェアへの出品や個展を行ってきましたが、私の作品は有難いことにコレクターの方に支持頂いてきました。今回、クラウドファウンディング の特典として写真作品かドローイング作品をお選び頂けます。ドローイングはもちろん、写真作品も手作業のスリットが入ることで、1点ものの作品になります。
最後に最後まで読んで頂いて有難うございます。
長い時間をかけて本の完成を間際にして、私は今この本は多くの方に読んで欲しいと心から願っています。
厳選に厳選を重ねた数十枚の写真たち。
先ほど書いた説明では書き切れない物語と美がこの本には詰まっています。
正直エゴです。でも、手に取って頂いて損はない本ができると思います。
見ていただいて、観る人それぞれに「指と星」の美や物語を感じて頂きたいです。
どうかご支援をお願い致します。
■特定商取引法に基づく表記
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目標は ¥500,000 に設定されています。
プロジェクトは 2019/03/27 に達成し、2019/04/25に募集を終了しました。
基本セット [送料・税込み]
お届け・提供予定時期
サポーター数 21
写真集コンプリートセット [送料・税込み]
お届け・提供予定時期
サポーター数 11
ブックスペシャル [送料・税込み]
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サポーター数 2 | 数量限定あと 3
写真レッスンプラン [送料・税込み]
お届け・提供予定時期
サポーター数 3 | 数量限定あと 2
作品プラン [送料・税込み]
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サポーター数 2 | 数量限定あと 3
スペシャルプラン! [送料・税込み]
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サポーター数 0 | 数量限定あと 3
早割500円off!! 基本セット [送料・税込み]
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サポーター数 30 | 数量限定あと 0
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