世界は狭いもので、たまたま全く別のプロジェクトで以前日本を訪問していた時に会ったことのある知り合いのイスラエル人が、元Hogtalareの開発責任者を務めていたことがわかりました。
この人。Omri Gino(オムリ・ジーノ)さんです。
早速、当時のことを色々と聞いてみました。その結果、この一見シンプルなスピーカーを開発するために驚くべき情熱を注いだ人たちがいたことがわかりました。
熱が思わず入ってしまったので思いっきり長くなってしまいました。さらっと流して読んでもらえればと思います。それでははじまりはじまり〜
「Hogtalare」の正しい読み方は?
スウェーデン語で「スピーカー」を意味する言葉で正しくは「ホーグタラル」と呼びます。北欧デザインに強く影響を受けたプロダクトであることから命名されました。(実際には商品を開発したのはイスラエル人のチームで、スウェーデン人は一人もいませんでした)
最大の市場である米国ではファンのコミュニティが生まれていますが、そこでは愛情を込めてHog(ブタ)と呼ばれています。
開発元であるMorel社について
1970年代にイスラエルで生まれたスピーカーメーカー。今から約20年前に創業者の息子が後を継ぎましたが、社名の由来は、創業者一家の苗字であるモルデハイ(Mordechai)の最初の三文字とスピーカーを意味するElectoro-Acousticsからとっています。
1980年代に入ってから、スピーカー製造に関連する沢山の新技術を産み出し、今日に至るまで、世界中のたくさんの企業に使われている特許も産み出している会社で、ダブルマグネットスピーカーという技術はその代表的な技術の一つ。(今回のHogtalareにもこの技術が使われています)
同社HPより。⑤の部分がマグネット。
同社は現在は家庭用のハイエンド高級HiFiオーディオと、カーオーディオ製品をメインに製造していますが、ここ数年間は、革新的なワイヤレススピーカーの開発にも着手。Hogtalareはその第二弾となる製品でした。
「Hogtalare」開発のきっかけ
社長のオレンは、第一弾の製品となった旅先にも気軽に持っていける大音量スピーカー「Nomadic」を開発中に、既にこのHogtalareにつながる構想を持っていました。それは正方形のマス目が集積した北欧の棚にぴったり収まるスピーカー。
NomadicやHogtalareはMorel社がスピーカーを全く別の角度からアプローチする試みの一つとして生まれました。同社の持つ、とても高価な超高級ハイエンドスピーカーの技術を使いより手軽に日常的に使えるスピーカーとして開発されたのです。
開発に携わることになったきっかけ
当時私は、Morelとは別のイスラエルのスピーカー会社に勤めていて、たまたまその二社が協力関係にあったことから、プロジェクトに参画することになり、Hogtalareプロジェクトのデザインと生産工程の責任者としてプロジェクトに関わることになりました。
以前から別の会社でスピーカーのデザインに携わっていたほか、フリーランスのプロダクトデザイナーとしても活動しています。個人的にもDIYスピーカーのデザインをしたりと、自分自身でもホビーとしてスピーカーを作ったりしてきました。
スピーカー以外でいうと、趣味でターンテーブルのデザインも手掛けています。そんなこんなで何年も、様々な形でHiFiオーディオ業界に関わってきましたが、今回は、自らが持っていたスピーカーデザインに関する経験を使いながらもプロジェクトを通じて、多くの学びを得ることができました。
Hogtalareの特徴について
Morel社のチームは、高いプロ意識で40年間以上スピーカー開発を続けており、そのベテランチームと共に作ったのがこのHogtalareです。
コンセプトは正方形のスピーカーを北欧デザインの棚に入れるということ。正方形がたくさん並んだ形になっている棚のことを総称してハイヴ(巣箱型)シェルフと言っているが、世界中で大変人気の定番のスタイルで、特に、IKEA製のものは世界中で1億3000万台売れた大人気商品。そこで、オレン社長はその棚にぴったりフィットする大きさのスピーカーを作ろうと考えたのです。
多くのHiFiスピーカーの一番の問題点は、その大きさです。大抵とても大きいか、沢山ケーブルが這っていて邪魔になってしまう。サイズ的には十分大きく低音がしっかりと出て、高級HiFiスピーカーと遜色ない音質を楽しみながらもその存在を消すことができたら。そして、スペースもそこまで取らないとしたら。そんな思いでHogtalareを作りました。
Hogtalareがどこに隠れているかわかりますか?
HiFiオーディオと呼べる音質を生み出すために、このスピーカーのために新たに設計されたカスタムメイドのドライバーユニットと、十分な音量を楽しめるアンプが入っています。
こうしてHiFiレベルの高音質を持ちながら小型のBTワイヤレススピーカーの利便性も得てスピーカーの存在感も消せる。結果として、HiFiスピーカーとBTスピーカー両方のいいとこ取りができるものが出来上がりました。
小型でありながらダイナミックな音を楽しめる本格派BTスピーカー
小型Bluetoothスピーカーというのはともすると小さくしようとした結果、箱の大きさの制約から低音がきれいに出てこなくなってしまいダイナミックさがなくなってしまいます。
低音を大きくしようと、多くのBTスピーカーは中にうねうねと管のような空間を作ったり、何とかスペースを作ろうと不思議な形になったりしがちですが、Hogtalareはとにかくシンプルな構造で伝統的なつくりをしている点で他のBluetoothスピーカーとは根本的に異なります。
Hogtalareを総合的な観点で見るといくつかのアプローチがほどよくミックスされていることがわかります。
伝統的なスピーカーとしての設計と音響的な構造。永年にわたって熟成されている技術を使った、基本に忠実な設計。バスレフ構造もその一つだし、ドライバーユニットも大型の高品質なものを使っていて他のスピーカーにありがちな音響補正やデジタル音質補正で物理的な制約を解決するなどのことは一切していません。
余裕を持った箱の容量、大型ドライバーユニット、大型のツイーターを使って元々が本物のHiFiシステムとして作られているからリアルな音が出るのです。
プロトタイプについて
最初は社内でレーザーカッターでMDF材を切って、プロトタイプを作るところから始め、そうしたプロトタイプをとにかく沢山作ってはドライバーユニットの大きさや種類などを試しました。様々なツイーターを使ったりドライバーユニットの位置を色々と変えてみたり。
ドライバーユニットの場所と大きさ、スピーカーユニットの寸法を大体決め、そこから初めて量産試作に移行しました。社内で色々と試行錯誤しながら試作を作る過程は本当に長い道のりでした。社内でサンプルを作っては、それを音響試験室に持ち込んでウーファーとツイーターの音が重なるクロスオーバーポイントを少しずつ調整したり。
ツイーターの間の距離一つとっても、少し変えるだけですごく影響がでます。また距離だけでなく、ユニットのどこにツイーターを置くかも大変でした。全ての要素が複雑に絡み、一つ変えるだけで全体に影響がでるのが大変なところです。
作られた数々のプロトタイプのほんの一部。
また、グリルを磁石でユニットに取り付けることにしました。ツイーターがグリルフレームに近いことから、グリル自体に細かい曲線を沢山つけることで音響ビーミングの悪影響をできるだけ減らすようにしました。さらに、ツイーター取付部を小さなホーン構造にすることで音質を改善。こうして細部の一つ一つのディテールにわたるまで、このように注意深く作り込まれました。
ホーン構造にすることで、ツイーターの再生可能域を広げることができます。ホーンを使うことによって、高音部・低音部ともに、音に深みがでるのです。これによって、ウーファーが担う再生音域を狭くすることができ、結果としてウーファーの負担を下げることで音質を向上できました。
ウーファーひとつ、ツイーターふたつというドライバー構成
あの大きさできちんとステレオで鳴らすためには左右がきちんと分離している必要があることからツイーターを左右に離して置いています。これにより、右のツイーターが右チャンネル、左のツイーターが左チャンネルを鳴らす形になっています。ウーファーは一つなので左右の音を両方鳴らしていますが、そのためにもツイーターにホーンをつけてモノラル再生になるウーファーの再生周波数帯域をできるだけ狭くするようにしています。
ウーファーは低音部だけを中心に担当することによって、ステレオ感を損なわずに再生することが可能になります。当初からステレオをきちんと再生するためにはウーファー一台、ツイーター二台が必要だと思っていて、あとは単純に、それぞれをフレーム内のどこに置けばベストなのかに集中しました。
ダブルマグネットドライバーを採用
ウーファーだけでなく、三つ全てのドライバーユニットが完全にカスタマイズされているのは先ほど話した通りですが、このツイーターについても、特殊な素材を採用しており、通常のソフトドームツイーターに比べて、かなり音質が改善しています。
最初のプロトタイプでは特殊に編んだ素材を使ったソフトドームツイーターを使っていました。ところが、高音があまりきれいに出なかったことから当初の素材よりもより硬い素材にすることで満足のいくアタックの強い音を得ることができました。
併せて、ツイータードライバーのマグネットについても変更しました。ウーファーについては、さまざまな大きさのドライバーを試し、バスレフポートの穴の場所についても変えてみたところ、ドライバーを駆動する磁石がより強いものである必要を感じました。
そこで、Morel社が1980年代に開発した、二つの磁石を使った構造を取り入れることにしました。二つの磁石をある特殊な方法で置くことで、スピーカー内の磁界を強くすることができます。
スピーカーの開発というのは机上の設計だけではなく、実際の経験がものをいいます。沢山の複雑な要素を総合して開発が行われますが、最初は計算式からスタートしバッフルサイズやウーファーなどを決めたとしても、あるところからはエンジニアの耳と経験が頼り。そして、より一歩引いたところから全体を俯瞰する必要が出てきます。先ほどから話している通り、ある要素を変えると、それが他の部分に影響してしまうので、細かい微調整が必要になるのです。
最終的にはちょうど全てがバランスする均衡点を見つけ、ウーファーのサイズ、それが相互に影響を及ぼすツイーターとの関係を決めることになります。その一方で、そこにバスレフポートも絡んでくるのでますます大変です。
ここで大事なのがMorel社にこれまでに蓄積されたものすごい経験値です。これを実際に目の当たりにし、彼らの知見がなければこのスピーカーが世に出ることはなかったと思いました。
社長のオレンは、スピーカーの音を聴いただけで、ボイスコイルの大きさを変えなければだめだ、とかマグネットを足した方が良い、とか瞬時にわかるのです。
なぜ?と聞くと「まあ、信じて」と。
不思議なことに、その通りにすると劇的に音が改善するのです。これこそ職人技だと思いました。
再生可能最低周波数について、あえて36Hzにとどめた背景について
この理由は色々あります。
4つ車輪がついている車を想像して欲しいのですが、もし、全てのパワーを車輪の一個に集中すると、その一個だけは非常にトルクが大きく、速くタイヤを回すことができるはずです。実は、スピーカーにも同じことがいえます。一つのドライバーユニットに幅広い音域を任せすぎてしまうと全てを正確に再生することは難しくなってしまうのです。
再生可能域が広ければ広いほど、そのドライバーユニットがきちんとした音質で再生することが難しくなる。なので、6インチのウーファーにあまり低い音を再生させてしまうと本来きちんと再生して欲しいミドルレンジに影響が出てしまいます。
また36Hzが最低と言っても、実際にそれ以下の音が出ていないわけではありません。実際には28、27Hz、場合によっては25Hzくらいまでは再生されているのですが、ある特定の周波数を境にロールオフという現象が発生して一気に音量が小さくなります。そこで、このロールオフが発生するカットオフポイントをどこに設定するかがとても大事になるのです。
実際、世の中には30Hz以下の音を出せる楽器はほとんどありませんが、そうした楽器に合わせて同じロールオフ特性を持たせれば実際と同じリアルな音を出せるようになります。低音楽器の代表格のコントラバスを例にとると一番低い音が大体29〜30Hzなのですが、それよりも低い音を出せる楽器はそれほど多くありません。
全音域にわたってバランスの取れた音が欲しいのか。低音から始まりツイーターにバトンタッチするまでのミッドレンジの音をリッチにするのか、それとも重低音にこだわってそこだけをよくするためにバランスを犠牲にするのか。
実際にはミッドレンジの音の方がはるかに大事なので全てはバランスの問題になります。そしていかにリアリティの高い音を追求できるか。確かに低音は耳だけでなく体へも刺激が強く、また高い音も耳への刺激が強いので最初は音に対する印象がとても強くなります。HiFiシステムを聴くと、まず真っ先に感じるのが可聴域の両端の部分で、重低音と、高音が伸びると皆とても感動します。ただ長時間聴き続けると高音だけがいたずらに強調されてしまっていると耳障りになり、低音はあまり出すぎると、近隣への迷惑が心配になってしまいます。
長い間音楽を楽しみたいと思うのであれば、尖りすぎずにバランスの良い音を目指すべきだというのが我々の考えです。
カーオーディオのDNA vs 超高級オーディオ側のDNA
当然ながら音質については家庭用の高級オーディオのノウハウが多く使われています。家庭用オーディオはカーオーディオとは全く異なる性質の音作りが必要となるからです。
一方でカーオーディオには、非常に小さく限られたスペースから最良の音を引き出すためのノウハウが多く詰まっています。車のドアの中には極めて小さなスペースしかなく、そこから高音質な音を引き出すためには多くの経験が必要となります。
今回のHogtalareにはその両方の技術とノウハウが惜しみなく投入されています。
商品開発途上での障壁
プロダクト開発には障壁はつきもので、デザイナーにとってはまるで ジェットコースターに乗っているような気分になります。特に覚えているのが開発初期の頃にぶつかった大きな山で、プロジェクトの存続が心配になるほどでした。
それは、グリル前面の操作ボタンの見せ方です。グリルパネルのファブリックを通して、後ろからボタンのライトが透けて見えるようになっているのですが、最初はファブリックにボタンの刺繍をしようとしていました。ところが、グリル上の刺繍と、その裏にあるボタンの位置がどうしてもずれてしまうことがわかったのです。当時から、スピーカーのビジョンとしてはキャビネットにしまった時に完全に存在感をなくすことでした。ファブリックに一部穴をあけて、操作ボタンが見えるようにしてしまうと、めざしているクリーンな印象が失われ、そもそものコンセプトに合わなくなくなってしまう。この問題について長い間良いアイデアが見つからず困っていたのです。
そんな中、ある日オフィスでこれについて話をしていたときに、ふとひらめきました。
机の中にあった布切れを取り出し、手元にあった紙をプラスの形にくり抜き、音量ボタンを表現してみました。そして布の下に紙を敷き、裏から懐中電灯を照らしてみたところ、紙にくり抜いたプラスがきれいに布に写ったのです。
早速オレン社長に見せたところ「よし、これでいこう」と。すぐに作業に取り掛かりました。
ボタンの光が一番きれいに見えるボタンとファブリックの距離を見つけたりと、まだ詰めるべき課題は残っていたものの、大きなデザイン上の山を乗り越え安心したのを覚えています。
ボタンの光が浮かび上がっています。
Bluetooth、TWSを使うというアイデア
我々のゴールは、単に音が鳴るだけのミニチュアスピーカーを作るのではなく、Morel社としても、これが自分たちの自慢である素晴らしい音質で鳴ることがとても大切でした。
このMorel社の大事にする音というのがとても特殊で、これが同社の他の超高級スピーカーにも生かされているのですが、この優れた高音質をそのまま受け継ぎ、真にHiFiスピーカーと呼べるものを作ることがミッションでした。なので、最初からTWSは必要だったのです。
同時に、こうした特殊技術の開発に自らのリソースを使わないという判断も最初からしていました。WiFiスピーカーではない、というのもその理由の一つです。これを開発しようとするとそちらに多くのリソースが割かれてしまい、価格も自分たちが目指すレンジから外れて高くなってしまいます。デザインプロセスでは、このデリケートなバランスを取るのがとても大切でした。HiFiスピーカーの音質を持たせることは絶対でしたが、それ以上に、HiFiとしての体験が大事だと思っていました。単に音が良いだけではなく、それを持つことの喜びを感じてもらえること。よりHiFiシステムそのものに没頭できること。
二つのスピーカーをステレオにして使える。これはとても大事なことでした。
また、音質を最優先し、これを最大化するために、敢えて最先端の技術ではなくある程度の時間をかけて熟成された技術を使うという選択も行いました。具体的には、敢えてBluetooth 5.0ではなく4.2のチップを選択しました。様々なBTチップを試す中で音質が4.2の方が単純に良いと感じたのがその理由です。
自分自身もオーディオファンで、家に大きなスピーカーやHiFiオーディオを持っていますが、実際に良く聴くのはHogtalareで、おそらく本格的なオーディオよりも多く聴いていると思います。
カジュアルというのが一つのキーワードになるかと思います。とてもシンプルで簡単に使えて、それでいて音質は他のBTワイヤレススピーカーとは比較にならないくらい本格的だと自信を持っています。
一番の売りポイント
先ほどお話したボタン以外で言うと、グリル周りのデザインも非常に気に入っています。マグネットで簡単に外せるようになっていてグリルについている小さなラベルを引っ張れば簡単に外すことができ、棚にぴったり収まっていたとしても、グリルを外して簡単に引き出したり元に戻すことができます。
デザイナーとしては、スピーカーへのグリルの取り付け方のようなユーザーには全く気づかれないような小さな部分にも、とても自信を持っています。デザインプロセスの中では、例え小さな課題であったとしてもひとたびそれが解決できると、とても幸せになれるものです。
そして何といってもサウンドデザイン、すなわち音響設計には一番自信を持っています。特に音質については寸法のディテールまで含め、最高の結果を出すことができたと満足しています。総合的に見ても、非常にバランスの取れたプロダクトだと思います。
IKEAのKallaxシェルフにはぴったりとはまるので、スピーカーを引き出す時にはまずラベルを持ってグリルを外し、それからボタンの部分か、バスレフ穴を持って引っぱると引き出せます。引っ張る時に重心が悪くならないように、バスレフ穴をユニットの上にもってきています。
ラベルは、まさにグリルを簡単に外せるようにつけたもので、マグネットで外せるようにしたのもそのためです。最初はプラスチックの部品でグリルをつけるようにしていましたが、そうするとグリルを外した時にコネクターが目立ってしまう。マグネットにしたことで、グリルを外してもドライバーユニットが見えるだけでそれ以外には何もなく、とてもすっきりしていてコネクターなどは一切見えないようになりました。
こうしたいくつもの小さな工夫を通じてデザインした結果、一番大事にしていた、とてもクリーンでシンプルな、決して日常の邪魔にならないものができあがったのです。
主張せずに溶け込むスピーカー
スピーカーの多くは、主張が強いと思っています。とても大きくて目立つので、部屋に入った時に話題になる。Hogtalareが違うのは、スピーカーが周りの環境に「溶け込む」ところ。
スピーカーについて話題にするのは、その音の良さに驚くからであって、部屋に入って、一番目立っていたのがスピーカーだから、ではないということが大事だと思いました。
カラーバリエーションはホワイト、ブラック、ブルー、レッドの四種類。今後はもっと追加色なども検討するとは思うのですが、最初の4色を決める時にもリサーチに時間をかけました。たくさんの家を見て、どういった家具にフィットすべきか。そしてどういう色であればその環境に一番合うのか。部屋のインテリアに馴染むようにしたかったのです。棚に入れなくても、スピーカーが部屋に溶け込み、存在感が消えるようにしたかった。色の選定にあたっても、そうしたリサーチを元にユーザーのインテリアを想像して決めました。
レッドやブルーといった色についても、実際に棚に入れると多少の存在感はあるが完全にフィットするので注意を引くほどまでにはなりません。そこにあるであろう、他の色に溶け込むようなトーンを敢えて選んでいます。そして、棚から出しても、ファブリック素材そのものがそこまで鮮やかなものではないのでそこまで主張しません。多くの人たちからは、もっと鮮やかな色は出さないのか?とも聞かれました。「若い人向けの楽しい商品なんでしょ?みんな鮮やかな色が好みだよ」と。
ただ、我々は鮮やかすぎる色を使ってしまうと当初のコンセプトに反してせっかくのシンプルなデザインにかえって違和感を持つようになってしまうと感じました。鮮やかな色は注目を浴びるが、我々の作りたかったのはそういうものではなかったのです。
注目を引きつけるべきなのは音の良さであって、決して派手なデザインや色ではないということ。
自分も家の仕事用の部屋に一つと、オフィスにもブラックのHogtalareを置いていて、個人的に一番気に入っている色です。ユーザーの間ではブラックが一番人気で、それに続いてブルーが人気色でした。写真と実物が違うことはよくありますが、実際に出来上がったホワイトは、写真を超える美しさでした。三台目を自分の寝室用に買うつもりなのですが、おそらくホワイトにすると思います。
Morelチームについて
自分は既に開発が終了しプロジェクトからは離れていますが、Hogtalare関連の新製品を開発するのであればぜひまたチームの一員としてプロジェクトに携わりたいと願っています。
このプロジェクトに携わった二年間は私の人生の中でもかけがいのない時間でした。Morelの人たちと共に働くのはとても楽しく、また他では得られない貴重な経験になりました。縁があればまたぜひ一緒に働きたいと思っています。
プロジェクトが終了してから既に1年が経とうとしているが、イスラエルでデザインされたこのプロダクトが国境を超えて、多くのユーザーがいるアメリカに渡り、そして今まさに日本の人たちにも届けられようとしている。自分たちの当時考えていたデザインプロセス自体が間違っていなかったことをこうした形で海外の皆様に注目していただけるのを目の当たりにして、改めて実感する。
Hogtalareと日本
このプロダクトは日本市場にもとても合うと思います。以前日本の部屋がアメリカなどに比べて小さいと言う話を聞きました。また、新型コロナウィルスにより、今までよりもあまり外に出ることができずにいる状況を考えても、日本市場に、今もっとも合う商品なのではないかと思うのです。
Hogtalareであれば小さい部屋でもさほどスペースを取らずに置け、そしてデザイン的にもシンプルなものを好む日本の人々にもきっと気に入っていただけるのではないでしょうか。
そして何よりも、今こうしてHogtalareが日本の皆様に届けられようとしている状況をとても嬉しく思います。
プロジェクトがうまくいくことを願っていると同時に、実際にプロダクトが届いた時にはプロジェクトを支援していただいた方々の感想もぜひお伺いしてみたいと思います。
さいごに
最後までお読みいただき、ありがとうございます!
Hogtalare事務局
まつざき(きびだんご)