こんにちわ。彫刻家の吉田孝弥です。
今回は「制作に使う素材と道具④(完結編)」
長く続いた、制作で使う道具と素材の説明もこれでひとまず終わりです!!!
東京造形大学へ
前回、東京造形大学の彫刻専攻に進学することを決めた僕。
プレゼンテーションが必要な受験方法を選びました。
プレゼンでは、自分がどういう作品を今後作っていきたいのか?ということが明確に伝わる内容にしたいと思い、プレゼン用に作品を作りました。
こちらがその作品↓
ヘルメット型の作品です。
仏像がアメコミヒーローのマスクを被り、それを自分が被る。(被る方式は分割式で仮面ライダー、目のキワに穴が開いていて、見る方式はウルトラマンなどの小ネタも…)という作品。
こちらも石粉粘土で出来ていて、中空なので阿修羅像と同じ構造体です…などをプレゼンで話し、
結論
「カッコいい物が合わさると、もっとカッコいい。老若男女に愛される作品を作りたいです!!!」
と、話しました。
そして無事、入学することが出来、彫刻を学び始めました。
東京造形大学の彫刻専攻が特化しているのは「人体塑像」。
粘土で作る人間の彫刻のことです。
ヌードモデルさんを呼び、等身大の彫刻を作る授業がメインになります。
人体塑像課題の講評会の様子(写真は皆、初めて人体を作った時!!)
等身大なので、粘土を何百㎏と使います。重いです。
塑像で使うのは「水粘土」
水粘土は、乾燥すると石化してヒビが入り、壊れてしまう為、そのまま作品にすることは出来ません。
水粘土
なので、
粘土で作る彫刻作品は、大きいものだと「型取り」が必須です。
この世界には重力があるし、彫刻には構造的な問題がいつも付きまといます。
その為に、型取り技法があり、「違う素材に置き換える」という手順を踏みます。
ですが、そこに僕は何か違和感を感じました。(作り手だと共感する人も多くいます)
作った原型(粘土)→型取り(石膏型等)
→原型(粘土)は取り出して、型だけ残る→型に素材を流す(石膏、プラスチック等)
ザックリとしていますが、こういう流れがあります。
石膏で型を取る「石膏どり」の画像でわかりやすく説明します↓
水粘土の原型
切金を打ち(型の分割部)一層目をふりかける
分厚く盛って補強した後、フタを外す
簡単ですが、こういう流れです。
この後は型を外し、粘土は取り出します。
このように、使いまわせる粘土(水粘土)で作ることが多く、型に他の素材を張り込んだり流し込んだりします。
なので、完成した作品は、いわば最初に作ったものとは違うもの。という考え方もできます。
作品を作る上でのプロセスで仕方のないことだし、意味のある行為です。
でも、これは僕の中のルールに反します。
「だって昔からやってた粘土のやり方と違うじゃん!!!
と、思うからです。
僕が昔からやっていたのは、
粘土で原型を作る→固まる→色を塗る→完成
という流れだからです。
原型を作る
色を塗る(完成)
あらゆる創作物には、歴史があり、作る理由、見せる理由があります。
しかし、作ることは誰にでも出来るのです。
僕が作品の鑑賞者に求めることは、
「自由に楽しく僕の作品を観て欲しい。」
ただそれだけです。
鑑賞者の中の、作り手ではない人や美術にあまり触れない人に向けて必要だと思っているのが、「皆が触れたことのある素材」「使ったことのある道具」で作ること。
作品制作が「図工や美術の時間」の延長に存在することなのです!!!
そういう流れで制作しないことや、違う素材に置き換えることで、形はもちろん「想い」や「記憶」までもが薄れてしまう気がするのです。
だから僕は、石粉粘土で塑像の制作を今でもしています。
長くなりましたが、「制作に使用する素材と道具」でした!!!
最後までお付き合いいただき、ありがとうございます。
次回からは、過去作の作品解説と僕の好きなものなどを紹介していこうかな〜と思っております!!!
月末には、個展のキービジュアル等を解禁する予定です。お楽しみに!