林業家・橋本光治さんの人生と森づくりの極意を本にまとめて届けたい!
取材裏話 100年の杉を受けとりに&クロモジの枝を伐りに行く
2種類の100年スギ
2022年12月2日、4tユニックをレンタルして橋本山へ向かいました。
クラウドファンディングのリターン特典を作るために、伐採していただいた木々を受け取りに行く旅でした。
今回、クラファンで使う木は2本分。1本は、2022年8月27日の新月に伐採し林内で乾燥していただいていたもの。そしてもう1本は取りに行く直前、11月24日の新月の日に伐採していただいたものでした。

2022年、11月24日に伐採していただいたスギの切り株。中心までしっかりと年輪が詰まっています。
11月24日に伐採したスギ。この写真の切り口より下の部分を使わせていただきました。
伐採していただいた木は、どちらも樹齢100年を越すスギの大木です。
世代を超えて、大切に育てられてきた木々を、特別に使わせていただけることになりました。
では、なぜ伐る期間が違うのでしょうか。
クラファンのために伐採した木が立っていた場所を見上げて。(写真:橋本忠久さん)
フォワーダを使ってクラファン用の木を山から搬出しているところ。写真右は、橋本延子さん。(写真:橋本忠久さん)
今回のリターン特典である、木の表紙カバーを使った特装版。杉の原木から角材を製材し、それを薄くスライスして紙状に仕上げていくのですが、これに使う木は「生木」に近い状態で加工する、というのが条件でした。
生木、つまり伐ったばかりであること、が条件だったのです。乾燥が進むと、割れが生じやすくなり、連続性を必要とする木の紙の加工が困難になるからです。
それに引き換え、紙コップホルダーや、壁掛け時計、スツールの原料となるスギは、しっかりと乾燥させる、という条件が必須でした。
そこで、伐採する期間が異なるスギ2本分をご用意いただきました。
滝川が訪ねる前日に、土場まで運んでいただいたスギたち。右が表紙カバー用、中央がスツール、細めのが壁掛け時計、左が紙コップホルダー用です。
刻印
橋本山林で出材する木に打刻する刻印は「カネハシ」と読みます。
右上の「カネ」と中の「ハシ」に加え、下につく「イチ」の字は、橋本の「本」に由来します。「本」は「元」=ものごとの始まりを意味するそうです。
打刻する金槌は土佐打ち刃物、色をつけるための「スミ」は30年ほど前に共販所でいただいたものだそうです。
木の小口には、「カネハシ」の刻印がしっかりと入っていました。
こちらが、橋本家の木を証明する刻印です。
すぐに製材

子どもとスギたち。大きさが伝わるのか伝わらないのか。
生木状態で、秋田県にある木の紙を加工してもらう工場まで送るように、高知へ戻ってすぐに製材所へ。
地元の製材所に賃挽きをお願いしました。
ノコを入れて、半分になった100年スギの断面を見た瞬間の驚きは今でも覚えています。
なんて美しいのか。
製材所の方も、「こんなに綺麗な木を挽いたのは初めてです」とおっしゃっていました。
無事に生木の状態で、秋田県の木の紙を加工する工場へ送り届けることができました。
そうしてできたのが、今回の特装版に使われる「100年スギの木の表紙カバー」なのです。

本当に美しい木目。100年の時を経て、生き生きして見えます。

角材に加工していただき、無事に秋田県の工場へ送ることができました。
橋本さんの100年スギを使った表紙カバー。木目の緻密さが見事!ここに橋本家の山づくりの真髄が詰まっています。
もう1本の木も製材する
続いて、紙コップホルダー、壁掛け時計、スツールに使用するスギも製材してもらいました。
こちらの木肌も本当に美しい。吸い込まれそうです。
紙コップホルダー用とスツールの脚用に角材を挽き、スツールの座面は輪切を製材していただきました。
この断面!美しいです。

100年スギの緻密さは、紙コップホルダーの美しい木目となって表れます。

壁掛け時計は、また別の場所で美しい輪切りにスライスしてもらいました。こちらも年輪がとにかく密!
スツール用に輪切りにスライスしていただいているところ。
スツールの原料となる輪切り。想像以上に大きいです。
できあがったスツール。迫力があります。サイドテーブルとしてもお使いいただけます。
クロモジの枝を求めて
子どもとクロモジ
橋本山の林内のあちこちに生えているクロモジ。忠久さんに案内していただきました。
年が明けて、2023年4月2日〜3日の二日間。子どもの春休みを利用して、再び春の橋本山へ。
この時の旅の目的は、壁掛け時計に使う、「クロモジ」の枝を取りにいくことでした。
クラファン特典である「100年スギの壁掛け時計」。その時を刻む時計針は、橋本山の木の枝を使いたいと思っていました。橋本山を象徴する木は何か?そこでスッと頭に浮かんだのが「クロモジ」でした。
1年前に家族で訪れたときに、新緑のクロモジの葉が光に透けて輝いていた景色が、とっても気持ちが良くて脳裏に焼き付いていたこと。クロモジの枝は、高級爪楊枝の素材として使われるほど、しなやかさと丈夫さを併せ持っていること。何より、橋本山にたくさん生えていること。それらの理由で、クロモジを使うことにしました。
忠久さんに手伝ってもらってクロモジの枝を切る。
子どもたちは、橋本山に来るのは2回目です。今回はしっかりお手伝い要員。
ノコギリを使って、クロモジの枝を集めてもらいました。
忠久さんは、子どもがやろうとしていることに全力で応えてださいます。
それは普段の研修でも同様です。実践を通して、経験を積んでいく。やりたいという気持ちを大切にする。
土を触って柔らかい、それは葉っぱがたくさん積もって多くの菌の働きによって土に変わるから、葉っぱがたくさん落ちるのは、多様な樹種が森を形成しているから。だから多様な生き物が暮らせ、ふかふかの土が、さらなる森を育ててくれる。その循環を、私も子どもたちも、身体の感覚を通して知るのです。
すべては自然が教えてくれる。
その言葉を体感した旅でした。
帰りの車内はクロモジでいっぱいに。

子どもたちが伐ってきたクロモジの枝が、100年スギの壁掛け時計に使われています。