林業家・橋本光治さんの人生と森づくりの極意を本にまとめて届けたい!
取材裏話 高田宏臣さん、坂田昌子さんとめぐる橋本山
土中環境、生物多様性の視点から橋本山を読み解く
2023年7月30日、子どもたちと一緒に橋本山を訪ねました。翌日から2日間開催される「徳島県那賀町・橋本山林に見る多様性豊かな森を作る、自然との向き合い方」と題したイベントの取材のために、前日入りをしたのでした。
このイベントは、橋本山を会場に、コモンフォレストジャパンの坂田昌子さん、地球守の高田宏臣さんが訪れ、生物多様性や土中環境など、それぞれの視点から橋本山を読み解くという試みです。
生物多様性の視点を持つ坂田さんと、土中環境で知られる高田さん、お二人とも全国からオファーがかかる超有名人。多忙を極める方達です。
そんなお二人が橋本山を訪れたのです。このイベントを通してどんな化学反応が起こるのか。私も含め、多くの人々の注目を集めました。前日と当日の午前中は、実際に山を歩き、午後からは近くの紅葉川温泉でオンライン座談会を開催しました。参加者はオンラインを含めると300人を超えました。
中央左から、橋本光治さん、高田宏臣さん、坂田昌子さん
集合風景。この参加者の数!!
山を歩くと行列に。すごい景色です。
現地参加の方々とともに、橋本山を歩きます。人数がかなり多いので、歩きながら自然と何グループかにわかれて、それぞれ話を聞く流れに。
私は、橋本忠久さんが説明するグループを取材しました。
途中、ポイントとなる場所まで来ると、全員が集まり、高田さんや坂田さん、橋本さんの解説が始まります。
岩場での土中環境、苔が果たす役割、根っこと菌根菌のつながり、生き物が果たす役割、自然を壊さない造作。
ただ歩くだけでは見えてこなかった世界が、お二人の専門的な解説を通して新たな発見とともに見えてきます。橋本山の秘密がどんどん明らかになる瞬間。参加者の方々も、大満足の山歩きとなりました。
息子の背中を使って、路網の説明を行う忠久さん。
ポイントとなる岩場で解説をする坂田昌子さん。
森の中で重要な役割を果たす露岩帯。磐座と言われる。循環の要石です。
苔は、風があたる方向に付着し、風に含まれる水分を捕捉する。
苔があることで、ゆっくりと水が動く。
垂直に切りとられた作業道の切り面を苔が覆って安定させる。
木の根が路面の崩壊を守る。
土の中を想像する
高田宏臣さんは、土の中の状態を「土中環境」という言葉で詳しく解説してくださいました。
普段は目に見えない地下の部分で、何が起こっているのか。水や空気の流れを妨げないようにするには、土中環境の改善が非常に効果的であること。
そして、橋本さんたちが普段から山を歩きながら、道端に落ちている石を、適切な場所へ詰んだり、枝葉を水が流れやすい場所を見ながら置いたりする所作の蓄積が、この山の豊かさにつながっていることを教えていただきました。
大きく成長した根の前で解説をする高田宏臣さん。
橋本山のハイライトでもある、切り面に張り出した根。幹と同じくらいの太さがある。
石を適切に積んで路肩を強化している。
木組も周囲の風景に溶け込んでいる。
命の連鎖を考える
坂田昌子さんも、土中に張り巡らされた菌根菌のネットワークの重要性や、多様な生物の命が連鎖していることで、豊かな森が育まれていることを教えてくださいました。
この時のオンライン座談会の時に、坂田さんが、橋本さんの山を歩くツアーをこれからも開いていきましょう!とおっしゃっていましたが、有言実行。このイベントの後で、坂田さんとめぐる橋本山ツアーは何度も開催され、毎回満員となる盛況ぶりです。このツアー、めちゃくちゃおすすめですので、ぜひ機会があればご参加ください。
倒れた木から新しい芽が芽吹く「森の始まり」を解説する坂田昌子さん。
匂いで虫をおびき寄せるキヌガサダケ。
森の豊かさの指標となる蜘蛛。蜘蛛の種類が多ければ、それだけ多くの虫が住んでいるということ。
寿命を終えた木に代わって、新しい木々が芽生える。天然更新する森。
山を開く
このイベントを前後して、橋本山は「見せる林業」を始めました。
視察を受け入れるだけでなく、ツアーを組んで山を開いていく。観光としての林業。これは、橋本忠久さんの挑戦でもあります。
木材の販売、光治さんによる全国行脚の講師業、それに加える第三の橋本山の活用方法を模索しておられるのです。それは、次の世代にバトンをつなげるため。選択肢を多く作ること、山の木々を伐りすぎないで、残しながらも稼ぐ手段を作ること。
この試みは、自伐型林業を志す私たちにも大いにヒントとなるものです。
常に進化する橋本山。今回のイベントはその流れをさらに加速させるものとなりました。
イベントの詳細が気になるかと思いますが、発売する本のなかで、しっかりとレポートさせていただいております。お楽しみに。
子どもの成長
今回のイベント取材も夏休み中の子どもたちと一緒でした。
3回目ともなると、橋本山の景色もだいぶ見慣れてきたようです。こうして活動報告を書きながら写真を見返すと、たった1年での子どもの成長速度に驚きます。今回も自然や、自然を愛する大人たちから多くを学んだようです。
さて、クラウドファンディングも今日を合わせて残り3日となりました。
明日は、全国取材の様子をレポートいたします。
参加者のお兄さんと川遊び。
自然に学ぶ。
歩き姿も少し様になってきました。
ツアーを終えて。あらためて贅沢な時間でした。