エポメトロープミニ|視野角180度のホログラフィックディスプレイ

エポメトロープミニ|視野角180度のホログラフィックディスプレイ

小難しい技術をカンタンに|前編|立体ディスプレイ界隈にはどんなプロダクトがあるの?

エポメトロープミニの「活動報告」第一弾です。 どんな内容にしようか悩んだのですが、まずは「立体ディスプレイ界隈にどんなプロダクトがあるのか?(前編)」それを受けて「エポメトロープミニはこんなコンセプトのプロダクトです(後編)」ということをお話しします。エポメトロープミニの開発に至った背景や動機について大づかみできるような内容を心がけます。

立体ディスプレイ界隈にはどんなプロダクトがあるの?

これまでに、公共の場で公開もしくは販売されているプロダクトについていくつか紹介し、後半で私なりのポイントを説明していきたいと思います。

SONY|RayModeler

SONYが2010年7月に試作機を公開した、『RayModeler』という立体ディスプレイです。水平360度に立体映像を展開できるということで話題を呼びました(実は今回取り上げるような超広視野角の立体ディスプレイの研究は、論文などを遡れば1990年代から行われていました。しかしながら、その情報の流通は限られ、学会やイベントで試験的に公開されるに留まることが多くありました)。
SONYが同時期に出願したRayModelerに関連すると思われる特許(特開2011-107665)を参照し、その構造を予想してみます。 この出願で提案される立体ディスプレイは、内側に湾曲した映像出力用LEDパネルをそなえ、その周りをスリットの刻まれた円柱が覆っている構造になっています。スリットによって内部のLEDパネルの見え方をコントロールし、この状態でLEDパネルとスリットの刻まれた円柱を回転させることで、周囲360度にその方向に対応した立体映像を表示できる、ということのようです。
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SONY | 空間再現ディスプレイ(Special Reality Display)

SONYが2020年10月に発表した、空間再現ディスプレイ(Special Reality Display) です。 こちらは同じくSONYが開発元ですが、先程のRayModelerの系譜とは異なり、多人数で視聴することは想定されていない装置になります。視線を正確にトラッキングしその視点位置にピッタリ合った高精細な立体映像を表示する技術・製品になります。位置検出・個人のユーザーの使用を想定している点ではVRヘッドセットのほうが近いものと言えます。現在『ELF-SR2』というモデルが、一般にも販売されています(価格は550,000円)。展示会などで実機を見たことのある方もいるかもしれません。
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VOXON Photonics | VOXON VX2

オーストラリアのベンチャー企業、VOXON Photonicsが2024年12月に発売した、VOXON VX2という立体ディスプレイです。 価格は日本円で100万円ほど。高速回転するLEDパネルが超高速で明滅することで、LEDパネルの通過した残像が立体的に見えるという代物です。VOXONはこの残像を立体的に見せる「ボリューメトリックディスプレイ」の方式にこだわりがあるようで、2017年ごろから継続していくつかの「ボリューメトリックディスプレイ」を発表してきました。
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まとめ

時代も方式もバラバラでしたが、ホログラフィックディスプレイと呼称されるような超広視野角の立体ディスプレイについていくつか紹介しました。この分野は現代においてもまだまだ発達途中の段階です。『3DCGをありのままの姿で表示する』という共通のゴールを持ちつつも、それぞれの企業や研究機関が自分の考えた最強の立体ディスプレイを提案する、、そんな状況が長いこと続いています。 ここで紹介したモノ以外にもいろいろなアイデア、発展の道筋が示されており本当にワクワクさせてくれる分野だと思っています。 一方で、個人的に良くないと感じる部分もあります。それは技術の流通の部分です。おそらくこの記事を読んだ方の多くが、紹介したような超広視野角の立体ディスプレイが存在していることを知らなかったと思います。それもそのはずで、上記に示された事例は、国内でも限られた場所でしか発表されていない、発表されていたとしてもなかなかに高額なもので実際のモノが流通しにくいという状況です。 低コストで超広視野角の立体ディスプレイを実現する、エポメトロープミニのコンセプトの根拠にもなっている部分です。後半では上記の状況を受けてエポメトロープミニがどんなコンセプトで作られたか深堀りします。