彫刻になって、ハリウッドスターと共演しよう!〜吉田孝弥彫刻展〜
作品紹介⑥「同じ場所に長くいるとそこが自分自身になる。」







「同じ場所に長くいるとそこが自分自身になる。」
制作年:2016年
素材:石塑粘土、発泡スチロール、檜材、アクリル絵具、油絵具
サイズ:2250×2850×1500(高さ×幅×奥行㎜)
この作品は、大学の卒業制作です。
【作品解説】
私は制作をする上で「映画」と「彫刻」をキーワードにしている。
今作は幼少期に通った新宿の新宿コマ劇場前をモチーフとしているため、ボディは屏風状に成っている。その場所には数年前まで、幾つもの映画館と手描きの映画看板があった。映画について考えると鮮明にその風景が思い浮かぶ。
鮮やかな色彩については、新宿のネオンや店舗看板などから影響を得ている。
造形大で人体塑造を四年間学んで、不便に感じたことが幾つかある。
今作は、私なりにそれに対する答えを提示したものだ。
一つは、人体像は約一ヶ月半の制作期間を与えられ制作するが、大体の形は与えられた半分以下の時間で出来てしまう。それからは作品をブラッシュアップする作業時間になる。
しかし、その時間は私にとって作品の根本的な魅力を減退させているように感じるのだ。
今作の小さな人体像のモチーフは、映画の登場人物などであるが、映画を観ていて「これ、作りたい!」と思った初期衝動が無くならない程度の短時間で完成させている。
上部の大きな顔、側面と下部の手足については発泡スチロールで出来ていて、一筆書きをするように、後戻りの出来ない瞬発的なカービングを用いて制作した。
二つ目は、これまでの首像は通常、底面が固定され、鑑賞者が作品の周りを一周することにより底面以外全てを鑑賞出来る作りとなっている。つまり鑑賞者が一周しなければ、首像の魅力全てを理解してもらえないということになるのだ。
一方で、この作品のボディの中心部にある3点の首像は、作品自体が鑑賞者に魅力を伝えやすい仕掛けを施している。底面に空間を作ることによって、鑑賞者が正面で立ち止まったまま360度作品を鑑賞出来る作りになっている。
今作はこういった点に着目して制作した。私が思うに、もっと彫刻(塑造)は面白くなれる気がする。
言い忘れていたが、これは自刻像だ。
※塑像→作られた像。
塑造→作る行為。
カービング→塊から彫り刻む技法。例、木彫、石彫など