日本古典文学を題材に小説連載・映像化!『遠い昔、はるか彼方』の日本の話を広めたい
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ベンの錦~Part3~
ヘリコプター
相当な勇気を必要としたであろう。
西洋社会は個人であっても社会であっても国家であっても、行動や決断には神との契約が内在する。
それは無神論者以外は例外なく、宗教によらずに存在する。
目に見えない、耳で聞こえる訳でもない。
だが、彼らは神に誓う。
そのため、QE発動前には、ベンは祈りを捧げていたことと推測する。
普通の並大抵の人間なら怖気づくだろう。
尋常ではないプレッシャーと非難の嵐に彼は襲われたことは容易に想像がつく。
それでも、心で感じるその宿命に突き動かされ、彼は開かれし禁断の扉の前にひるむことはなかった。
しかし、ここで問題が発覚した。
ベンが『ヘリコプター作戦』を行おうとするも、それ以前に、その政策を支えるアメリカ国内の金融機関が死に瀕していた。
「どうしたものか?」
と困っているところに<主>との契約によって成り立つ、<主>よりも下部構造の組織の政府が起き上った。
ここで、百人力の政府に、置いてけぼりになりつつあった、いくつかの金融機関に資金を注入して支援をするように頼んだ。
とはいえ、第43代大統領ジョージ・ブッシュから44代のバラク・オバマへと代わる転換期であり、前者はレイムダック(任期が終わるのを待つのみの権限が弱まった政府)の状況かつ後者は誕生したばかりでおぼつかない状況が予想された。
しかし、ここはさすが”USA”である。
そんな状況いざ知らず、両党の優秀なタレント陣が迅速かつ適切に対処していた。
政府は眠気眼をこすりつつも、その国にかける想いと勢いは凄まじかった。
こうして、ベンの作戦はようやく実行の段階にたどり着くも、なかなか回復の兆しは見えなかった。
もちろん、長期に渡る苦難が予想されたが、それ以上に困難で骨の折れる仕事となった。
ベンは眠れない日々が続いた。
非難されようとも、それ以外方法も思いつかないので、毅然とした態度で立ち向かった。
続いて、思った以上に伸び悩む市場に、ベンはQE2、QE3・・・と追加緩和を行い、まるでアメリカ上空から金の雨が降るかのごとく、紙幣を放出していった。
このおかげでアメリカは、効果覿面ではなかったとは言え、なんとか雇用率を維持した。
やがて、ベンは任期の終わりを迎えた。
依然として回復の兆しが遠い状況に、彼は、国内にとどまらず、各国のメディアや市民からの非難を浴びた。
憎しみに感情を支配された人々の罵倒と怒号の中、彼はその席から去っていった。
しかし、その席にベンは『見えざる手』の主より承りし<錦>の切れ端を残していった。