存続危機の石版リトグラフを、工房最後の刷り職人×デザインのチカラで盛り上げたい
SEKITAKU 製作中

8色のSEKITAKU色校正。インクもストーンマークも鮮やかです。
石版の持つ魅力を凝縮したプロダクト
もし、みなさんが車木工房を訪れてくれることがあれば、きっと、そこに眠る石版たちの、圧倒的な存在感に驚かれるかと思います。その数や質量もそうですし、そこに刻まれた”時の流れ”みたいなものも感じられる方もいらっしゃるかも知れません。
実際に見ていただければ、そのモノの持つ魅力は一発で伝わるはずの石版なのですが、なにせ重さ10kg〜70kg超。そのままみなさんのお手元にお届けすることはできません(しかも、なにせ貴重なのです、石版って!)。

圧倒的重厚感ッッッ!!!!
その「もったいなさ」をどうにかしたかった私たちは、職人と知恵を出し合い、石版そのものを紙に写し取ることを考えつきました。コードネームは「SEKITAKU(石拓)」。「魚拓」の石バージョンです。
とてもシンプルな発想です。でも、工房の長い歴史の中でも初の試み。なぜならこれまでの作品づくりでは当然「何が描かれているか」に主眼が置かれており、「石版」自体は単なる道具に過ぎなかったからです。シンプルだけど、逆転の発想。
手法はシンプル、作業は大変
「SEKITAKU」は、石版の全面にリトグラフインクを塗布し、ハンドプレス機でしっかり圧力をかけて紙に写し取ります。紙には、インクとともに、石版の跡=ストーンマークがくっきり。

石版全面に一気にリトグラフインクを塗ります。この段階でもうキレイ。

仕上がり。これ、アイデアを思いついて一番最初に刷ったもの。撮影日を調べたら昨年5月でした。時間、かかったなあ…。
シンプルな見た目とはうらはらに、作業はかなり大変。なかでも一番難しいのはストーンマークのプレスです。石版の上には、それを覆い隠すように、大きな紙が載っているので、職人は石版を直接目視することができません。そんな状態で、石版のエッジ部分がどこなのかを、ハンドルから手先に伝わる感覚だけで見極め、腕には渾身の力を込めてプレス機をコントロールするのです。

石版より紙が大きく、どこが石版のカドなのか見えない。そしてカドで寸止めしないと、ストーンマークがきれいにつかないという無理ゲー。

でもさすがそこは職人。ストーンマーク、くっきりついてます!これ実は、白い紙に白インクで刷るというミニマルすぎる一枚。
デジタルでは表現できない色を作る
「SEKITAKU」のもう一つの特長は、リトグラフインクの持つ発色の良さをシンプルに感じられること。工房のプロダクトは当然全て特色※で刷られているため、色に深みと自然さがあります。もちろん調色も全てアナログ。職人が、指定された色を目で確認しながら、ちょっとずつ複数のインクを混ぜ合わせていきます。粘り気が強く、混ぜにくいリトグラフインク。余談ですが、私が以前調色にチャレンジしたときは、思い通りの色が全く作れない上に、手首も痛くなりました…。

これもさすがは職人!PANTONEカラーチップと寸分違わぬ調色。おみごと!

以前にもご紹介しましたが、調色したインクはサンプルをアルミホイルに包んで保存。また作るときのために。
私たちは冒頭の8色の色校正から、バランスなどを考え、何色かをセレクト。ご支援いただいた方のリワードにしようと思っています。また色校正では全て同じ石版を使って刷っていますが、セレクトした色によって”似合う石版のカタチ”というのもあるのではないかと考えています。それも職人と考えていきたいと思います。

冒頭で紹介した色校正を、事務所のパーティションに飾ってみました。
SEKITAKUをさらに楽しんでもらうために
SEKITAKUは、ストーンマークの凹凸やインクの美しさを、直接触れたり、見たりしていただきたいプロダクト。なので現在開発中の、Re:lithoオリジナルポスターハンガーで飾っていただければ、その魅力が伝わりやすいんじゃないかなあ、と考えています(ポスターハンガーにつきましてはまたいずれご紹介できればと思います。)。
「アーティストと職人が共同作業で作品を生み出していく」というのが、これまでの工房のあり方でした。そんななか、この「SEKITAKU」は「職人の手だけでモノを作る」という全く新しいコンセプトのもとで生まれようとしているプロダクトです。その分とてもプリミティブで、工房や石版のポテンシャルが端的に伝わるものになっているかと思います。
質感とストーリーを飾るインテリアプロダクト「SEKITAKU」。制作が進行次第、さらなる続報をお届けいたしますので、お楽しみにお持ちくださいませ!
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