本日わざわざ大阪から、お取引のあるバックメーカーの代表の方が近くの会社に行く用事があるからと、ついでにうちにもご挨拶に来てくれました。
その中プロジェクト内で軽く触れた「複雑な事情」が本日お話の中で出てきました。「職人さんを残すこと」についても。
本日は少し思うところがあるので、今の業界の状況と過去に何があったか、これからどうするべきだと思うか綴っていきたいと思います。
【職人を抱え、育成している株式会社櫻井さん】
(HP:
http://www.bag-sakurai.com/)
以前のプロジェクトの商品も櫻井さんのところでサンプルを作りました。これから本生産で縫製をしていただく所もこちらです。
そんな株式会社櫻井さんは創業60年を数える老舗。現在三代目のお方です。内部に職人さんを抱えている工場であり、腕は確かで、リレーションはスムーズにオーダーをこなしていただけます。
ところが職人さんを外注として頼んでいるところも多いので
職人さん自体が高齢化などで少なくなり、見つからない工場さんも多いそうです。その為僕等みたいな作りたい人間に対して手が回らない、もしくは受注できないことが多いようです。実はこれ、僕も何回も体験してきたことでした。
そして現在機械は高度化し、お金がある海外や大手企業がこぞって導入している模様です。その機械は可能な限り自動化が可能になっており、すでに職人さんがこなしてくれたかなりの作業は可能となっています。このため海外のクオリティーはメイドインジャパンに近づきながらも低コストを維持して製品が出来上がります。
しかし、このままでは職人さんはいなくなってしまいます。
本日お話した櫻井さんは若手の育成に努めているそうです。櫻井さん方もこのプロジェクトと同じ「職人を守る」ということを考えていらっしゃいました。
【過去にあった「いじめ」】
実は少なくなってしまった背景に過去にメーカーからの「いじめ」がありました。
実はこの辺僕にも身内の痛烈な思い出が。
プロジェクトに出てくる僕のおじいちゃんは町工場の経営者で車のメーカーを相手に商売をしていました。ちょうどバブル崩壊最中、僕のおじいちゃんはもう潮時だなと判断、会社をゆずり後継者に任せたそうです。
後継者は共同で創業した人のせがれが継ぎました。おじいちゃんの子供(自分の母とおばさんにあたる人)は二人とも娘だったので。
実はこの時”下請け叩き”がすごかったそうです。
そして代表が代わったその数年後でした。既存の取引先を引き止められなかったんでしょう。合わせて利益も出ず重圧に耐えきれなかったんでしょう。そのせがれさんはなんと
自殺してしまいました。
それが自分が中学生くらいのとき。
僕は全くもって商売に興味がなかったので「大変だったんだろうな」と只々思うだけで、その事の真意は理解できませんでした。
しかし、大人になってからその背景を理解、問題性を深く思うようになりました。
何もこれは車の下請けだけじゃありません。ゼネコンの下請けも、アパレル関連も、ほか”職人”が必要とされる業界も同じ流れなのかなと思います。
だから、その反動が今に来ている。昔の時代背景が積もり積もって若手は職人さんになりたがらなかったんですね。僕だけじゃなく、皆が親や祖父の苦しむその風景を見ているから。
【世界に散らばってもどこかにある「犠牲」】
そしてそれから利幅を求める動きは続きます。工場は世界に散らばり、人材は人件費の安い海外をピックアップする事が当たり前になりました。
もうこれから大量生産、大量消費、低価格のものに関しては世界的なインフラを構築している大手企業に勝ち目はありません。正直安くそれ相応なものを買おうと思ったらそういった企業の製品を買うことをお勧めします。
しかし「早い、安い、うまい」というような三拍子揃ったお店は必ず裏があります。どこかで原価を抑えるため必ず犠牲になっている何かや、誰かがいます。
例えばファッションの裏側などもぜひ知っておいてください。
こちらは安いTシャツの自動販売機を町中に設置し購入しようとすると製造現場の映像が流れ、その映像を見た人たちの反応を捉えた動画。
こちらはバングラディシュの汚染。
物価が安い海外で人件費を徹底的に切り詰める事によって現在のファッションの幾つかは成り立っています。きっとそれは皆さま誰しもが持っているブランドかもしれません。
【そして日本が必要なことは】
現在中国の人件費が高騰したため一時的に仕事が国内に戻ってきています。現在制作側は”簡単で大量に作れる製品の受注”を優先しています。簡単に儲けたいのが本音のようです。僕らは製品を作れない事がしばしばあります。
そして大手はインフラを今度は東南アジアに構築しています。そしたらまた皆”用済み”となってしまいます。
日本が必要なのは”そういったものの生産”ではなく「光る技術」それをいかに残すかという事だと思うんです。
【高品質な日本製が構築されるまでには下積みがあった】
ぜひ今度「Made in Japan」と他国製品を比較してみてください。何に関しても中国などの大量生産品少し高いですが、そのクオリティーはしっかりしているはずです。
世界的に認められている日本の品質。そこには機械もあまり発達せず、まだコンピューターもない時代から少しづつ積み重ねられてきた、日本の伝統や研鑽されてきた技術があります。
例えば車。僕のおじいちゃんは零戦の機関銃や歩兵小銃やらを造兵廠で作っていました。みな戦後その技術を使って町工場で独立、世界的な高品質車を作り出す下支えとなったんですね。
それだけでなく皮産業も紡績産業も実は日本にはとても伝統があるんです。
戦後の労働者の有限&個人事業率は全体の60%。
そもそもがいろいろな分野で長い間培われた職人さんの、「個」のスキルが無くして日本の高度経済成長はあり得なかったということをぜひ知っておいてください。
【財である職人さんたちとこれからを継続してゆく】
僕は人は材料として捉えてはいけず、「人財」として捉えるべきなのかなと思っています。機械のようにすぐできるものではなく「人財」は長い間かけて培われる財産なんだと思います。
短期的な利益を求める思考や、”バブルの遺産”である旧日本的な企業体制はいらないとは思いますが、”職人さん個人”は技術進化や時代の流れで無くしちゃいけないなって思うんです。
僕は、微々たる行動しかできませんが、少し高くても日本の職人さん個人に仕事が回るように需要を作り出していければなと思っています。それが自分の役割かなと思っています。
【三方良しを構築したい】
昔「商売の鉄則だぞ」とじいちゃんから聞いた言葉に「三方よし」という言葉がありました。売り手、買い手、作り手(※正しくは"世間"だったんですね)。
全てが円満になるのが商売のあるべき姿だと。
現在の経済だと必ずどこかにそれを阻害する要素がありますね。その方が粗利が取れますので誰かが絶対犠牲になる。僕はそこに疑問があります。
僕は言葉通り、職人さん、お客さん、もちろん自分自身も関わる人がみんな喜べる環境が構築できたらよいなと思っています。そして中間業者は極力つるまないでいようかなとも思います。
僕はこのクラウドファンディングなど先進テクノロジーを利用し、商売に古来よりあった”人間味”を取り戻したいです。そして「三方よし」な世の中になればいいなと思っています。
(画像引用は
”三方良しを世界に広める会”より。存在を本日発見しました。こんな団体もあるんですね。)
ぜひこのブログを読んだ事で「Made in Japan」を見た際は、それは職人さんがちょっとづつ築きあげてきた資産なんだ、という事を少しでいいので思い出していただけたら幸いに思います。
実はプロジェクトの背景にはそれがあり、こんな事を考えながら行っている次第でございます。そして株式会社櫻井様、本日はわざわざお越しいただきましてありがとうございました。
さてプロジェクトもあと13日。何卒気になる方はよろしくお願いいたします。
【「ハイエンドな完全防水レザーパンツ」の開発~日本製に日本人が付加価値を第3弾~】
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元記事:
MAJESTIC CLOSET