今回作るバッグは基本的にカメラバッグなので、眼に見えない部分に使われる部材が普通のバッグよりも圧倒的に多いのが特徴です。その一つが緩衝材。
チクリッシモは、カメラやパソコンを持ち歩くことを前提としているので、お互いがぶつかったりせず、かつ、外からの衝撃を吸収することを考え、「分厚くなりすぎず、保護機能もしっかりある」というギリギリのラインを考慮した厚みの緩衝材を用意した結果、パターンナーの西澤さんのもとに届いたのは、大量の緩衝材の山でした。
もちろんこのままでは使えないので、布地の裁断を生業とする「抜き屋さん」に運ばなければなりません。結局、レンタカーでトラックを借りることになりました。
ちなみに、こちらの画像はカットが終わったマジックテープの束です。数百メートルあるロールから、西澤さんがたった一人で、丁寧に裁断しました。なぜそんな手間がかかるのかというと、資材のメーカーは裁断までは面倒を見てくれないから。西澤さん、ありがとうございます・・・(涙)
裁断屋さんに行くと、既にカットが済んだ帆布と、背当ての部分に使うダブルポリメッシュの山が置いてありました。重量が恐ろしく重いため、人力では上げ下げできず、フォークリフトのパレットの上に鎮座しています。特に、チクリッシモの帆布はPVCを貼り付けてあるので、集まると余計に重いのです。
ここでも西澤さん、職人魂を発揮して、帆布とポリメッシュのパーツの合いを確認。ポリメッシュは柔らかくて厚みがあるので、分厚く重ねて裁断すると、上の段と下の段で、微妙に大きさが違ってくることがあるからです。とりあえず、問題はなさそうです。
ちなみに、これが裁断機。重厚です。
「こんな大きな機械を持ってるところは、もうほとんどないね」
とは、社長の弁。誇らしげでもあり、どこか寂しげでもありました。モノづくりの火は、少しずつ、しかし確実に小さくなっていっているのです。
気を取り直して、今度は一時間半かけて埼玉の縫製工場に向かいます。
そこで待っていたのは、「待望の」量産サンプル!
帆布は通常、よく動く色だけメーカーに在庫されているので、すぐに手配できるのは白か黒だけです。従って今回、特別な色に染めなければならなかったコヨーテブラウンより先に、ブラックのサンプルが仕上がったのでした。
工場の社長、工場長、パターンナーの西澤さんを交え、2時間かけて細かい部分の仕上がりをチェック。最終的な微調整ポイントを詰めます。その結果、縫製の仕上がりを美しくするため、カブセ部分のバイアス(布の縁取り)の長さと色を変えることに決定。表からは見えないところなので、そこまでやる必要があるのか迷いましたが、結局、全員一致で「妥協しない」ことになりました。
さて、そろそろチクリッシモのお届けの時期が迫ってきましたが、今のペースで行くと、まず最初にお届け出来そうなのは、やはりスモーキーブラックからになりそうです。おそらくは11月下旬スタートになるかと思われます。
当初の予定より若干押し気味ですが、東京・埼玉・福岡の各スタッフが、全力かつ、慎重にも慎重を期して進めておりますので、今しばらくお待ち下さいませ!