黒板消し
先日、高校の先生が卒業する生徒に精巧な黒板アートでサプライズしたという記事を見ました。費やされたのは7時間、とても粋な計らいだとは思いつつ気になるのは、その作品をどなたが消したかというところ。もしも私がその立場に立ったら、握る黒板消しがプルプルと震えてしまいそうです。さて、皆さんが最後に黒板消しを握ったのはいつですか?高校でしたか?中学校?黒板消しといえば長方形のプラスチックにうねうねの隆起のある布が張られたシンプルな形状。緑だったり紺だったりするあの布ですが、実は今回のプロジェクトで使用したコーデュロイの一種です。
コーデュロイという名称
黒板消しは特殊な例ですが、日本では60年代アイビールックに、カントリージャケットやハンチング帽などカジュアルでスポーティな洋服素材として用いられてきました。日本に輸入が始まった当初は、下駄の鼻緒の素材として大流行、足袋に用いられることもあり、1890年代には遠州から日本国内での製造も始まっています。最近では、ウールコーデュロイ、絹やレーヨン、テンセルと綿の混紡など、軽くしなやかで光沢のあるドレッシーなコーデュロイの開発も進んでます。
さて、このコーデュロイもともと何語かというと英語の「corduroy」。コード「cord」と、かつて英国で織られていた粗い毛織物を呼ぶ「deroy」が合わさってできたのではないかとのこと。一説には、仏語で王様の畝「corde-du-roi」とされ、ルイ14世の宮廷庭師の制服にこの素材を採用したことが始まりとされる説もあるそう。日本ではいくつか別名があり、例えば「コール天」。この「天」は「天鵞絨」の略で、天鵞絨とはビロードのこと。他に畝ビロードという呼び方もあり、畝を表す「コード」+「天鵞絨」が訛ってコール天になったようです。
パイル織物
コーデュロイは織物のうち、パイル織物に分類されます。代表的なものがタオル、タオルの表面に見られるループ状の糸こそパイルで、表面積が増えることで、吸湿性や保温性が高まる仕組みとなっています。下駄の前坪に使われるワナやタオルのようにループが見られるものをループパイル、コーデュロイのように先端がカットされているものはカットパイルに分類されます。ビロードや別珍もこちらに当たります。
ビロードは経糸でパイルを作る縦パイル織、別珍は緯糸でパイルを作る緯パイル織りです。コーデュロイは別珍と同じ緯パイルで、語源や別名から明らかなように縦畝とビロードにも似た光沢感が特徴となっています。
さらに、畝幅で鬼、太、中、細、極細コールと呼ばれ、大小組み合わせた親子コールなどもあります。生地問屋さんに在庫確認するなどは齟齬が起きないように「14ウェールの扱いはありますか?」といったように、1インチあたりの畝の本数と英語のウェール「wale」を合わせた呼び方をすることもあります。
ちょっとエレガント
今回のプロジェクトで使用したのは21ウェール。コーデュロイにしては比較的薄手で着心地が軽いためシャツにも使用され、シャツコールとも呼ばれます。具体的にどれくらい軽いかというと、14ウェールのLサイズ男羽織の試作品は823.5gだったのに対して、21ウェール版は全く同じ寸法にも関わらずは538.5gでした。子供服やベビー服などの例外を除けば、幅が太いほどスポーティで、細いほどエレガントな雰囲気になります。
もちろん服のデザインによってどれほどスポーティになるかエレガントな印象になるかは変わってきます。主観にはなりますが、羽織というデザインの場合はわりとエレガントに仕上がっているように感じます。とはいえ、木綿ですので「ちょっとエレガント」を掲げさせていただいております。
最後に
さて、長文にはなりましたが、以上コーデュロイの説明でした。紬にいろいろな種類があるように洋服生地にもたくさんの種類があるんです。素材に注目してみると、ちょっと日常が変わるかもしれませんね。
第一回のキーワードは「4」。このキーワードの詳細はまた後日。