大三島に移住して、私達が住んだ地域は「好味(こうみ)・戸板(といた)」と呼ばれています。元々農家さんの方が多い地域で、お借りしている家のすぐ隣には柑橘畑やキウイ畑があります。
移住して以来、この地域の皆さまからは本当に良くして頂いてます。季節のお野菜や果物、獲れたての魚、時には夕食のおかずを頂いたりもします。特にうちの子は皆さまに大変に可愛がって頂いてまして、散歩をすれば、ジュースやお菓子、リンゴ、バナナを持ちきれないくらい頂くことも少なくありません。この地域に住むことが出来て本当に運がよかったと思っています。
そんな好味戸板で年に1回開催される小さなお祭りが「好味御薬師祭」です。移住して1年目から色々とお手伝いをさせて頂いてまして、3回目となる今回はパンを初めてご提供しました。
このパンは、みかん酵母ではなく、麹をベースにした「あこ天然酵母」を使ったパンです。しっとり柔らかく、日本らしいパンが焼ける酵母だと思っています。
大三島でパン屋を開業する時に、ハードパンに向いているみかん酵母(発酵種/ルヴァン種)のパンと、ソフトパンに向いている「あこ天然酵母」を併用するつもりです。特に高齢化が進む大三島では、ハードパンが必ずしも地域の方に喜ばれるわけではないですし、地域のニーズに合ったパンもご提供したいのです。
あこ天然酵母で16時間くらいしっかりと1次発酵させた生地は旨味のある優しい味わいのパンになります。今回は、そのままでも食べられるようにバターと岩塩を少し効かせたパンに仕上げました。
まるまどで使っているバターは、北海道産生乳100%のよつ葉発酵バターです。香りが強くて、食べた時に何とも言えないリッチな気持ちにさせてくれるバターです。
※このクラウドファンディングを通じて、大学時代の友人の一人がよつ葉乳業に勤めていることが分かりました。自分の愛用している材料のメーカーに知り合いが勤めていると知るだけで、こんなにハッピーな気持ちになるのかと、嬉しかったです。
2次発酵を終えた生地に、はさみで切り込みを入れて、ダイス状の発酵バターをのせます。さらに、その上からイタリアのシチリア産岩塩を振って焼き上げます。
溶けたバターが生地に染み込んで、何もつけずに美味しく召し上がって頂けるパンです。粉は、北海道産のキタノカオリを使いました。もっちりとしながらも歯切れのよいパンに仕上がります。
このパンを1個100円で、好味御薬師祭に持っていきました。
数をあまりご用意できなかったので大変に申し訳なかったのですが、17時開始のお祭りで17時5分には完売。。。地域のみなさまの、パン屋に対するご期待を感じることができました。来年は今回の10倍はご用意できるようにがんばります!
この好味御薬師祭、私たちが大好きな地域のお祭りです。この地域に住む方達が主体となって作り上げているお祭りで、「お接待」と呼ばれる独特の文化を感じられる場でもあります。
四国八十八ヶ所を巡礼する「四国遍路」を経験したことがある方であれば「お接待」には馴染みがあるかもしれませんが、私は全く経験が無かったので、最初は少し戸惑いました。お金を払い何かを入手することに慣れ過ぎていて、お金を払わず食べ物や飲物が提供されることにどうしたらいいのかと思ったのです。
瀬戸内海の天草から丁寧に手作りした「ところてん」や、地元産のスイカ、手作りのお漬け物で作ったおにぎりを食べると、この地域で暮らせて幸せだなとつくづく感じます。
うちの子は、もうすぐ3歳になります。東京に住んでいたのは6ヶ月間なので、大三島での生活の方が長い「島の子」です。
小さな頃から豊かな文化に慣れ親しみ、これからも地域の方に見守られながら成長していくことを想像すると、この地に移住してきてよかったなと心から思います。
地域の方々から頂いたご好意を、少しでもパンでお返しできるように精進いたします。