1月23日にガスオーブンの搬入が完了して、その後、厨房内の備品を整え、菓子製造業と飲食店営業の許可を無事に取得することができました。そして、2月18日(日)にはじめて新しい厨房でパンを焼きました!
当日の様子を写真を交えて振り返りたいと思います。そして、まるまどで使っているガスオーブンのこと、ご説明させていただきます。
当日は、日が昇らないうちから作業を開始しました。6時半頃になると、徐々に明るくなりはじめて、厨房には朝日が入ってきます。光がすごく綺麗だったので、照明を消して、暫く窓を眺めていました。
厨房には、大きな窓が1つと、出入り口の扉窓が1つ、そして洗い場に窓が1つあります。厨房は採光に優れているので、朝はとても気持ちがよいです。こんなに恵まれた環境で、パンを作れるなんて... と何度も思ってしまいました。
当日仕込み分のミキシングが終わって、前日仕込みの生地の1次発酵完了までに余裕があったので、珈琲を入れてひと休み。東京に帰ったときに仕入れてきた国立コーヒーロースターさんの一杯を飲みながら、これから毎朝、自分で珈琲入れて、こういう時間を過ごせるのかと思うとすごく満ち足りた気持ちになりました。
好きな機材と食材に囲まれて、気持ちのよい環境で、自分が提供したいと思うパンを思う存分焼くことができる。もちろん、それは自分のパンを食べてくださるお客様があってのことで、まだ何もはじまっていないうちから、幸せに浸るなんて馬鹿げているのかもしれないですけど、自分の人生にこんなにも満たされた時間があるということが、幸せでした。
そして、はじめて自分でガスオーブンに火を入れました。両サイドに、備長炭に匹敵する2~5ミクロンの赤外線をバランス良く放つ「シュバンクガスバーナー」が付いていまして、上火を作っていきます。下火は、石板の下のガスバーナーが作ります。
福岡県久留米市にあるガスオーブンメーカー、キュウーハンの製品です。日本ではじめて遠赤外線の輻射熱を使ったオーブンを開発したメーカーさん。1つ1つの部品にこだわり、国内の自社工場で作られているMade in Japanのオーブンでございます。
このオーブンの最大の特徴は、上火の熱が直接的な熱ではなく、輻射熱であることです。輻射熱は、伝統的な石窯で発生する熱で、この原理を科学的に研究して、石窯の熱構造を再現したのこのガスオーブンなのです。
両サイドから放たれる赤外線を、炉内天井の高効率反射装置で照り返すことで『遠火の強火』の理想的な焼き加減を可能にしています(キュウーハンHPより引用)。
薪を燃料とした石窯を自作して2年間パンを焼いてきた自分としては、石窯の構造を再現したというのが本当に魅力的に思えました。そして、実際に、製パン・製菓メーカーさんが一堂に会するモバックショーというイベントでキュウーハンさんのガスオーブンを見て話を聞いて、そこで焼いたパンを食べまして、もうこれかしかなと思いました。もちろん、主要なガスオーブンメーカーの製品は全て見て、話を聞いた上での決断です。
実際にメーカーの方に話を聞いてみると、製品もさることながら、そのメーカーの社員の方との相性とか、自分と同じ匂いを感じるもので、圧倒的にキュウーハンさんがよかったです。
ガスオーブンに火を入れてすぐは、蒸気が発生して(特に冬場)、警報器が誤作動してしまう可能性があるので、少し空気を入れながらオーブンを温めます。空気を入れる備品すら愛おしい。細部にこだわっている製品は、使っていて本当に気持ちがよいものです。
ガスオーブンということもあり、立ち上がりも早いです。ほんの3-4分で下火は100度近くまで上がりました。
そして、20分弱で、下火は設定の200度に、上火もその5分後には設定温度に達していました。冬時期に25分くらいで立ち上がるのですから、凄いスピードだと思います。
今回、新しいオーブンで焼くパンは
(みかん酵母の発酵種で)
くるみパン
山葡萄パン
(あこ天然培養酵母で)
食パン
クリームパン
あんぱん
チョコパン
今後お世話になるご近所さんのためにあこ天然培養酵母を使って焼いた柔らかいパンをお持ちしました。木次牛乳、よつ葉の発酵バーを使ったリッチな生地です。これは、万人ウケするパンを目指しています。フィリングのあんこは北海道産のあずきと鹿児島の粗糖を使って、クリームは木次牛乳とオーガニックのバニラビーンズなどを使って手作りしました。
それから、みかん酵母の発酵種を使ったパンも焼きました。
上の写真は、作業台であるウォルナット(くるみ材)に、くるみパンの生地を寝かせているところです。オーガニックの胡桃をふんだんに使ったこのパンは、私たちの利益を最大化することを考えずに作ることを決めました。良質な食材は扱っていて気持ちがよいものです。
成形して、2次発酵を終えた胡桃パンを、スリッピングピールに寝かせます。そして、クープを入れて焼いていきます。これが結構重たいので、1人で上手くできるかちょっと不安だったため、何度か素振りというか練習しました。お陰で、上手に焼き床に生地を落とすことができたように思います。すごく楽しいです。
はじめて窯の中で膨らんでいくみかん酵母の発酵種のパンを、キュウーハンの丸窓からずっと眺めていました。今回は、下火230度、上火200度でスチームを入れて30分焼成してみましたが、次回は、スチームを入れずに上火210度、下火230度で焼いてみようと思います。
これから思う存分、高性能な機材を使って自分が最良と思うパンを探求できるんです。。。夢じゃないかと。。。すごいことだな~、幸せだな~、どんな美味しいパンが焼けるようになるのかな~と、常にわくわくしながら作業をしておりました。
あこ天然酵母の、あんぱん、クリームパン、チョコパンは、今だかつてないくらい上手に焼けました。やっぱり、よい機材を使うと違いますね。。。みんな良い表情してます。(本当は全部のパンの写真を撮りたかったのですが、下記の食パンの写真を撮った直後にカメラをコンクリの床に落としまして、壊してしまいました。本当にごめん、GR。)
中でも食パンはぴか一でした。キュウーハンのオーブンは、他社製品に比べて、窯伸びすることで知られているのですが、今回はそれを痛感する結果となりました。
ご近所さんにパンをお持ちしたとき、「うわぁ~、食パンがおいしいそう」と言って頂きました。
総じて、初めてのパン焼きは成功だったと思います。
ただし、みかん酵母の発酵種を使ったパンについては、まだまだ思ったように焼けておらず、返礼品のご送付までに、何度か試作を繰り返して、よい状態のパンをお送りしたいと考えています。
返礼品の用のパンは、3月中旬から5月にかけて焼き、お送りする予定です。有り難くもご送付する数が多いため、少しお時間を頂きますが、気長にお待ちいただければ幸いです。
追伸:
キュウーハンさんのオーブンに付いている窓は、丸窓です。私たちは、丸い窓がついているようなお店をやりたくて、「まるまど」って屋号をつけたのですが、自分がよいと思ったオーブンの窓が偶然にも丸かったのです。最高の丸窓が、お店にあってよかったです。