こんにちは。Curio School設立者の西山です。今日の活動報告ではなぜCurio Schoolを開校するに至ったかについて書きたいと思います。
僕は18歳のときに製品デザインを学ぶために大学へ入学しました。
そしてその時に思い知りました。同級生と比べて自分の創造力がないことを。
絵を描くことだけがデザインではなく、アイデアを発想すること、そしてそのアイデアが何かしらの問題を解決していること、そして感性に触れる解決策であることを知りました。
一方、そんなことをさらりとやってしまう同級生が存在し、どうしてこのような差が生まれたのか、ずっと悩んでいました。創造力とは生まれ持った才能なのかとも思いました。
そんな風にモヤモヤとしていたとき、スタンフォードのME310という「デザイン思考」をベースとした製品開発プロジェクトに参加する機会を得ました。当時はデザイン思考という言葉が日本では知られておらず、なんのことか?と思いながら参加したところ、最初のオリエンテーションとして「ペーパーバイクの製作」というものがありました。これは3週間後に行われるとあるゲームのために、紙製(主にダンボール)の人力のバイクを4名1チームで製作するというものでした。とあるゲームとは、大小10個程度のボールが地面に置かれており、そのボールを手を使わずに木製のラックまで運び、その運ぶボールの数によってポイントを競うというゲームでした。ボールには手で触れられないため、バイクに搭乗した人がダンボールで製作した何かしらのツールを用いてボールを運ぶ必要があります。
「このようなバイク製作とゲームのどこがデザイン思考なのか」と最初は疑問に思っていました。そして僕は日本人4名のチームで参加し、ゲームのルールを理解し、戦術を考え、そこからコンセプトスケッチを起こし、材料を集め(材料も特に用意されているわけではないため、自分たちで探してこなければならないのです)、ペーパーバイクを仕上げていきました。一方、スタンフォード大学のチームはルールもそこまで理解しないまま、とりあえずペーパーバイクを仕上げていくという、僕らからすればありえないことをしていました。
そしてゲーム当日、僕らはこんなペーパーバイクを製作しました。
ある意味普通のバイクであり、小さいボールを中心にかき集めてポイントを稼ぐ、といったコンセプトのバイクです。一方、スタンフォードのチームが考えたバイクはこちら。
なんと空気砲。バイク自体が空気砲となっており、相手チームのボールをラックから空気砲で落とすという、僕らが考えつかなかったアイデアになっていました。そしてゲームは空気砲チームが相手チームのボールを面白いように落としていき、結果として圧勝するという結果になりました。
そもそもこの空気砲のアイデアは、スタンフォードのチームが遊びながら生まれたものであり、試行錯誤を繰り返しているうちに出来上がったというものでした。そしてそれこそがデザイン思考の本質の1つでした。とりあえずやってみる、そして検証する、そして再度アイデアを検討する、というサイクルを高速で回すことでアイデアをブラッシュアップしていくのです。特にこの「やってみる」というのは言うは易し行うは難し、であり、なかなか多くの人が躊躇してしまうところです。なぜなら完成度が低いアイデアを作ってみる、やってみるということに意味を感じないからです。しかし大事なことは、そのアイデアのコアとなる部分さえ検証できれば良いので、たとえ完成度が低くてもそのコアだけ機能する試作品を作ればよいのです。そして「やってみる」ことを通じて、コアとなる部分が機能するのであればさらにアイデアの完成度を高めたらよく、またコアとなる部分が機能しないのであれば、アイデアを変更すればよいのであり、無駄にアイデアの完成度を高めてから「やってみる」より圧倒的に早いのです。
ここではじめてデザイン思考を理解しましたが、同時に、なぜこういった概念が日本では広まっていないのか、という疑問も抱きました。もっと早くからデザイン思考の概念を理解しておけば、大学に入学した時に感じた自身の創造力のなさというものも、実は解決したのではないか。そして創造力は小学生や中学生といった小さい時から育めば十分に育つものではないのかと。
そこで僕は社会人として会社で働くとともに、土日を活用して友人のデザイナーたちと小学校や中学生、高校生向けにデザイン思考をベースとしたワークショップを企画・実施していきました。例えば、「掃除をデザインするワークショップ」では、普段の掃除の時間をもっと楽しく、もっと効率よくするためにどんなことができるかということを小学校の掃除時間を用いて行いました。そうすると、面白いアイデアを次々と思いつく子どももいれば、なかなかアイデアが思いつかない子どももいました。
アイデアが思いつかない子どもというのは、本当にアイデアが浮かばないケースと、アイデアは思いつくけれどもそれを他人に言えない、という2つのケースに分かれていることが分かりました。アイデアが思いつかないというのは、今までアイデアを考える機会がなかったから、そしてアイデアを思いつくためのインプットがなかったからなのですが、アイデアを他人に言えない子どもというのは、他人から自分がどう見られているか、アイデアを笑われないか、バカにされないか、ということが気になって言えないのです。そしてこのまま中学生、高校生と進むにつれてその殻は固くなりがちであり、気が付くと失敗を恐れて何もできない人になってしまう可能性があります。
僕は単発のワークショップを通じてこのような課題を発見し、悩みました。確かに単発のワークショップも意味があるけれども、定期的にこのようなワークショップを行わないと殻を破ることは出来ないんじゃないか、単発のワークショップでは限界が有るのではないかと。
このような経緯があり、結局3年間ほど課外活動としてワークショップを運営してきましたが、そろそろ本腰を入れて取り組まないといけないと思い、このCurio Schoolを立ち上げることに至りました。Curio Schoolは自由に自分のアイデアを言う、そしてそれを認めるということが出来る場所にしていきたいと思います。
これからもご支援よろしくお願いします。
(詳しくは
こちらの記事にも書いております。お時間のあるときのお読みください。)