皆様は「教室」という言葉をお聞きになった時に何を思い浮かべるでしょうか。
たとえば机、椅子、黒板などでしょうか。イギリスのソールフォード大学の調査によると、教室の環境が子どもの学力の向上・あるいは減退に対し1年間で平均して25%も影響することが明らかにされています。(Peter Barrett,(2011))
Curio Schoolは2015年4月より千駄ヶ谷にて開校する予定ですが、ここで学ぶ子どもたちがどこにいても自分の意見が言えて、人の意見も聞ける、そしてものづくりまで出来る環境を整え、子どもたちの発想に物理的な制約がかからないような環境の構築を、このプロジェクトを通じて皆様にご支援いただきたいと考えています。
具体的には
・子どもたちが自由に描いては消せるように、壁面をホワイトボードにする。
・子どもたちがスペースを有効に使えるように、折りたたみ式の机を用意する。
主にこの2点に関してご支援をお願いしています。
どのようにしたら効果的にCurio Schoolにきてくれる生徒が学習できるでしょうか。それはいかに生徒がたくさん自分のアイデアを表現できるかだと思います。
Curio Schoolの授業スタイルはプロジェクトベースドラーニング(PBL)と呼ばれる、生徒同士や生徒とファシリテーターが議論や実験を行いながら答えを考え 、実物や経験から学ぶものです。
そのためには、生徒が自分の考えをたくさんアウトプットし、試行錯誤を繰り返す必要があります。それでは、生徒やファシリテーターが積極的な議論を行うために必要なものとはなんでしょうか。私たちは2つあると考えてます。
一つは表現できる”雰囲気”を作ることです。
そのためには例えば教師と生徒の関係が大切です。これはみなさん経験的にお分かりかもしれません。過去の研究では、常に声をかける、仲良くするといったような教師と生徒の親和的関係が生徒の成績を向上させるようなものがあります。(河野義章(1988))また、教師の心情は生徒の心理的状態に影響するとされ、教師が不満、またはストレスを抱えるといったような心理状態は生徒にも伝播するとされています(Melissa A. Milkie 2011)
また勿論ですが生徒間の関係も学習効果に関係しています。Curio School では、生徒間の相互理解や信頼を生み出すためにSELという教育プログラムの導入を検討しています。SEL (Social Emotional Learning)とは、CASEL(Collaborative for Academic, Social and Emotional Learning)という機関によって情報が収集されている、欧米諸国で実践される心理教育プログラムです。実際にこの導入によって生徒同士の人間関係が向上し、態度や行動の変化、情緒的な問題の減少、学力の向上が証明されています。(Durlak,Weissberg,Dymnicki,Taylor,& Schellinger(2011))
そして2つ目として、表現する手段を多様化することも重要です。
生徒が発言や表現を促すような雰囲気作りだけで十分でしょうか。もう1つあると考えています。それは表現する手段です。ここで、今回のプロジェクトで目的として挙げているホワイトボード、および机が必要となってきます。表現するというのは、発言だけにとどまりません。図や絵をつかったり、実際に立体的にものを作ってみたり、身体を使ったりといったようなものも表現でしょう。生徒にあった表現の手段を与えるために、表現の手段を多くしたいと考えています。加えて、多種多様な表現をすることを促すために机が自由に移動できるようなオープンスペースにすることを考えています。このオープンスペースは子供たちの自主的な活動をサポートするためにいくつかの小学校で導入されています(倉斗綾子, 橋本都子, 上野佳奈子 2011)。先にあげたソールフォード大学の調査の中でも、教室に色が使われているかということや、家具をどのくらい簡単に整理できるかといったスペースの自由度なども学習効果を高めるための、教室デザインの評価になりました。
Curio Schoolで学んでほしいことを生徒が効果的に身に着けるには、生徒が積極的に自分のアイデアを表現することが必要に思っています。そのためには、Curio Schoolの空間にいるみんなの信頼や理解が大事であり、さまざまなものを駆使して自分の考えを表現してほしいと思っています。
そのための環境整備として、まず手始めに壁面ホワイトボードの設置と机の製作を考えています。皆様のご支援、どうぞよろしくお願いします。