丸久商店 5代目若旦那 おすましバージョン
「注染ゆかた」製作工程をお伝えするために、丸久商店さんが保管されている型紙の中から1デザインを選んで、男性用と女性の「注染ゆかた」を作ることにしました。
元の型紙は、そのままでは染めに使える状態ではなかったため彫り直し。
彫り直しながら、今回使用する生地のサイズに合うようにレイアウトの調整をお願いしたり、若干の変更も加えたり。(後述)
その型紙ができあがったとご連絡をいただいきましたので、丸久商店さんへ伺いました。
型紙の表と裏
丸久商店さんが選んでくださった図案は、私たちが歌舞伎好きということもあり「与話情浮名横櫛(よわなさけうきなのよこぐし)」の「源氏店(げんじだな)」の場面をモチーフにしたもの。
図案に描かれた柄が、その場面の登場人物を表しています。
主人公の切られ与三を表す豆絞りの手ぬぐい
この場面で主人公の与三郎が被っているのが豆絞りの手ぬぐい。与三郎は、とある事情で顔や身体に34ヶ所の傷をつけられたので、手ぬぐいで顔を隠しています。
蝙蝠安を表す蝙蝠
傷だらけの与三郎は、流れついた鎌倉で出会った頬に蝙蝠の入れ墨がある蝙蝠安の相棒になり、体中の傷跡を元手にして強請りなどをして暮らしています。
柳は、男の間で揺れるお富さんを表しているのでしょうか。
詳細は、歌舞伎公式総合サイト「歌舞伎美人」さんをご覧いただくとして、
上のリンク先の解説にも書かれているとおり、この「源氏店(げんじだな)」というのは、元々は史実の「玄冶店(げんやだな)」に由来していて、この「玄冶店」は人形町三丁目あたりに建っていたらしく、今も人形町三丁目交差点付近には「玄冶店跡」の史蹟碑が建てられています。
この「玄冶店跡」のある場所と丸久商店の所在地は、徒歩5分の距離。(Googleマップ調べ)
丸久商店さんのストックの中から発見された「源氏店」。
しかも、そもそもの玄冶店は丸久商店さんのご近所。
そして、彫り直す。
丸久商店オンラインショップより
ならば、丸久商店さんらしさも追加したい!
いくつかある豆絞りの手ぬぐい柄のひとつを、丸久商店さんが販売されている復刻てぬぐいのデザインのひとつでもあり、お名刺にもワンポイントとして使われている「あられ柄」にしませんか?と無理なお願いをしまして、
丸久商店を表す小紋柄の手ぬぐい
ひとつだけ「あられ柄」の手ぬぐいになりました。
そんな経緯で生まれたこの図案のタイトルは、「丸久げんやだな」に決定。
この後、この型紙は、染工所へ運ばれて、染めの工程に移ります。
染め上がりの色のイメージ
次回は、この型紙を使って染めている様子を取材してご報告する予定です。今しばらく。
さて、最後に、丸久商店5代目若旦那のドヤ顔バージョンでお別れです。
(頼まなくてもドヤ顔してくださる若旦那、心強し。)
丸久商店 5代目若旦那 ドヤ顔バージョン
(追記)
歌舞伎の演目のあらすじと見どころを分かりやすく解説している「歌舞伎演目案内」もオススメです。