あなたのデザインで「注染ゆかた」を作ろう!竹ノ輪浴衣2019

2018-10-09 21:21:00 活動報告一覧に戻る

【サンプル注染ゆかた製作記 #1】サンプルの柄を選ぶ(文・しまざきみさこ)

サンプルの柄として選ばれた型紙
明治32年創業の丸久商店は、綿布専門の注染問屋です。店を構える日本橋堀留町界隈は、かつて呉服商が並んだ中央通りのお膝元。絹布(けんぷ)を扱う店が多いなか、丸久商店は綿布、とりわけ注染製品を主軸に家業を継いできました。
四代目店主 斉藤雅之さん
注染とは、明治時代から続く染色の技法。重ねた布を一度に染められる生産性のよさ、表裏のない美しい染め上がり、ぼかしや色の染め分けなど注染ならではの柄遊びができることから、昭和中期まではゆかた、手ぬぐいなど綿製品の染めの大半を担いました。しかし大量に安価につくれるプリントなどにおされ、染工場が激減。現在、その技法を続けているのは関東でも数軒という状況です。
保管されている型紙(ほんの一部)
丸久商店は問屋として、図案師、型彫師、染工場と連携して注染製品(浴衣や手拭い)を生み出し、それを小売に卸しています。図案は図案師のものを買うこともあれば、その年の流行や顧客の好みをみながら問屋みずから考案することも。四代目店主の斉藤雅之さんは自他ともに認める「型紙好き」で、閉業する同業者から昔の型紙を「ついつい」買い上げることもしばしば。店内に山と積まれた昔の型紙は、いつかやってくるかもしれない出番を待っているように見えます。
柄を選ぶ様子
「せっかくだから、昔の型紙からサンプルを作ってみましょうか」と提案してくれたのは、五代目となる斉藤美紗子さん。古い和もの、丁寧な職人技に目が無い竹ノ輪チームには願っても無い試みです。「歌舞伎観劇会など開催されている竹ノ輪さんに、ぴったりかなと思っていた図案があるんです」と山積みの中から取り出した型紙には、柳にコウモリ、そしてなにやら奇妙な形の物体。小さい水玉のような模様が見てとれます。「柳にコウモリは、わりとよくある柄なんです。でもここ。わかります?」と美紗子さん。
五代目となる斉藤美紗子さん
「切られ与三だ!」と竹ノ輪チームが歓喜したのは無理もありません。歌舞伎の人気演目『与話情浮名横櫛(よわなさけうきなのよこぐし)』、通称『切られ与三』に出てくる与三郎のシンボル、豆しぼりの手拭いのモチーフなのです。となると当然、コウモリのモチーフは与三郎の相棒、蝙蝠安(こうもりやす)。しなやかで女性らしい柳の枝に、頬かむりした与三郎と蝙蝠安が見え隠れするという、じつに粋な柄行き。あっという間にサンプル型紙が決まったことは言うまでもありません。
(左)染める前の綿麻スラブ(右)染められた後の綿麻スラブ
サンプルを染める反物は、綿麻のスラブ生地。これはデザイン選考で決まった図案を染める布のうちのひとつと同じです。まずは古い型紙なので、それを元に新しい型紙を彫り直してから染工場へ。どんな工程で作業が進むのか、順次活動報告でアップしていきます!(しまざきみさこ)

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プロフィール

  • 竹ノ輪 竹村圭介


  • 竹村圭介(たけむらけいすけ) 2006年より「和に遊ぶ!竹ノ輪」として、歌舞伎観劇会、落語会や日本酒の会などの開催をはじめる。 2007年から2010年までの4年間、クリエイターやアーティストがデザインした柄を伝統的な手染め方法「注染」で浴衣にする 「竹ノ輪浴衣」を企画運営。参加したクリエーターと共に注染の工場を見学。その企画で製作された浴衣を着て8月の歌舞伎座で上演される納涼歌舞伎の観劇会を開催。2011年の東日本大震災をきっかけに同企画を一時中断。 同年より、それまでに得た注染ゆかたの制作ノウハウを生かして江戸型染作家 小倉充子(小倉染色図案工房)のサポートを開始。注染だけではなく、型彫りや型染め、浴衣や着物の仕立てについても知識を得る。 また、2009年より大西新之助商店(滋賀県彦根市・伝統工芸士 大西實)の麻織物ブランド「新之助上布」の展示会設営などのサポートをはじめ、苧麻から繊維を取り出す苧引き(おびき)や織機の取扱い、経糸の準備をする整経(せいけい)も体験している。 現在は、着物の委託販売イベント「キモノ里親さがし」を半蔵門の竹ノ輪ルームや都内各地で開催中。
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