良いぶどうを育むために
「kibidango(きびだんご)」のフェルミエのピノ・ノワール造りのプロジェクト。募集期限(3月27日午前0時)が迫ってきました。宜しくお願いします。
ピノ・ノワールに取り組むにあたり、今年2月にブルゴーニュの畑やドメーヌを視察してきました。既存のフェルミエの畑との一番の違いは、密植度(単位面積当たりの植樹数)でした。最近は日本でも垣根栽培が普及しましたが、トラクターなどを使用するための作業性を優先することにより垣根と垣根の間の間隔(畝間)が欧州と比べると広いのです。また、欧州に比べ湿気が多い日本ではフルーツゾーンを高くする傾向があったり、日照量を確保するために葉の枚数を多くする目的で垣根が高くなり、自ずと日当たりをよくするために畝間を広くする必要もあります。
しかし、収量を抑え、凝縮感のあるぶどうを栽培するためには、痩せた土壌で密植度を高めることが一つの方法です。加えてフランスでは、密植によりぶどうを競争させ、根をより地中深くに向かわせ、岩盤層のミネラル分を吸収させる効果も狙います。既存のフェルミエの畑の畝間は2.5mです。フランスでは畝間1.0~1.5mの畑が多いのです。株間はフェルミエの畑で1.2m、フランスでは1.0m程度です。
フランスではトラクターなどの機械の規格が狭い畝間に対応(トラクターは垣根をまたぎますし、シュニアーという幅の狭い機械もあります。資金力のあるドメーヌは馬も使う。)していますが、日本ではそうはいきません(*資金力があればフランスの機械を購入して同じことができるのですが)。例えば、フェルミエで1.5mの畝間にするとどうなるか。この植え方では畑に機械が入ることができません。施肥も防除も収穫も一切の作業でトラクターやトラックの力を借りることができなくなり、より手作業で、自らの足で移動しながら作業を行うことになります。真夏の炎天下での防除作業では薬液を入れると重量が30kgにもなる動噴を背負い、防水具を着込み砂浜のような長さ100mの畑を何往復もすることになるのです。ダイエットにはなると思いますが想像するだけで吐き気がしそうです。さらに知恵を絞る余地はあると思いますが、今ある道具を最有効利用してもあまり差はありません。
しかし、原点に返って考えてみます。作業性を優先するか、ぶどうの品質向上の可能性を優先するか? 自ずと答えは後者です。今週末、フェルミエがピノ・ノワールの苗を植える際は、株間1m、畝間1.5mにしようと思います。写真の細竹は上記間隔で挿してあり、この位置に苗を植える予定です。
言うのは簡単ですが、実際には大変な重労働を強いられることになりそうです。さらに、日照の問題などこれまでとは樹のバランスも変わるのでそのための対処も必要となります。このように、多分に試行錯誤を繰り返しながらという面はありますが、ピノ・ノワールのワイン造りに取り組む以上は、相応の覚悟はせざるを得ませんし、できることはやりたいと思います。
栽培方法については、はじめから無農薬栽培や有機栽培、ビオディナミなどを宣言するものではありません。勿論、結果として環境や人に負荷をかけない持続的な栽培方法を採れればよいと考えています。しかし、目的は、「良質な日本のピノ」を造ることであり、ある特定の栽培方法を目的化するものではありません。敢えて栽培方法に言及するならば「リュットリゾネ(減農薬栽培)」ということになると思いますが、ぶどうの状態に合わせて柔軟に対応する局面もあるかもしれません。