存続危機の石版リトグラフを、工房最後の刷り職人×デザインのチカラで盛り上げたい

存続危機の石版リトグラフを、工房最後の刷り職人×デザインのチカラで盛り上げたい

Mariya Suzuki さんとの作品作り2-試し刷り-

刷り上がりの紙(左)/街の絵が描画された石版(右)。版画なので、像が反転しています。

製版具合をチェックする試し刷り

皆さんこんにちは、Re:lithoです。
先日Mariya Suzukiさんが描画してくれた石版を、今回、職人の長野さんが試し刷りしてくれました。試し刷りとは、薬品加工で製版した石版が、うまく版になっているかを試す作業。 色校刷りや本番では様々な色の「プリントインク」を使いますが、今回はお試しなので、黒い「製版インク」を使って刷っています。このインク、本来は文字通り、製版の過程や、版の保存時に使うもの。中に入っている油分の割合などが、プリントインクとは異なるそうです。それでも「刷れちゃう」ところが、リトグラフのややこしい点でもありますが。。。こうして臨機応変に「代用」してしまうのも、職人さんの合理主義の現れだな、と最近は思います。
色版(左)/主版(右)。石版サイズが違う理由は後述します。
街を描いた作品では、2つの石版を使っています。右の小さい方が主版(おもはん)と呼ばれる、絵のメインとなる線画です。左の大きいほうが色版(いろはん)。ビルの窓のところだけ、リトペンシルで塗っています。
色版を刷った紙(左)/主版を刷った紙(右)。本番ではこれらが、同じ紙に、違う色のインクで刷られます。
これを製版インクを使って紙に刷ったのが上の写真。細い線もきれいに刷れており、面の濃淡もしっかり出ています!ひとまず製版成功です! 石版と、刷り上がりの紙とでは、像が反転しているのがおわかりいただけるでしょうか?そう、刷り上がりがこの向きになるよう、石版には反対の像を描いていただいていたのです。と言葉で書くのは簡単ですが、実際はとても大変な作業。ほぼはじめての体験であろうこの作業を確実にこなす集中力に、Mariyaさんのプロフェッショナルを見た気がします。

きれいなストーンマークを付けるために

もう一度、2枚上の、石版を2つ並べた写真をよく見てください。主版の方の石版(右)は小さく、色版の方の石版(左)はやや大きいものを使っています。また1枚上の、刷り上がりの写真も再度要チェック。主版の方の紙(右)には、絵の周りにぐるりと、石の跡=ストーンマークが付いています。色版を刷った紙(左)には、何も跡が付いていません。石版のサイズをわざわざ変えているのは、ストーンマークをより美しく付けるための、職人の工夫なのです。
このように、クリエイターのみならず、職人サイドでも作品のクオリティを高めるべく、さまざまな工夫と技術を重ねています。今回は少しでもわかりやすくするために、2版の作品づくりの工程を説明させていただきましたが、3版の作品となるともっと複雑に…。
朝食を描いた、3版作品の石版。色版1(左)/色版2(中)/主版(右)。複雑過ぎて色版2(中)が上下反転してるの気づかず撮影してしまった…
朝食の作品の試し刷り。重ねたときの絵が、見えてきましたか?
先日、Mariyaさんから、色を指定したチップが届きました。いよいよ次回は作品の全貌が見えてくる、色校正刷り!メンバー一同、めちゃめちゃ楽しみです! インスタグラムやってます↓
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