過疎化する宿場町にみんなが集まるおいしいコーヒー屋をつくりたい!
【往復書簡】DEKITA時岡より SOL'S COFFEE中島さんへ 2通目
SOL’S COFFEE 中島さんへ
熊川宿と若狭地方への素敵な感想、率直に嬉しかったです。
出会いから出店が決まるまでの中島さんの心の変化を追体験しているようでとても興味深く拝読しました。
僕も熊川宿のある若狭町ではなく、その隣の隣まちであるおおい町の出身です。
同じ若狭出身なんですが、
「熊川宿が地元です!」とはちゃんと言えない半分外の目を持ちながら熊川宿に関わらせてもらっています。

そんな僕も熊川宿に不思議な魅力を感じています。
中島さんの言うもう一つの暮らしを感じるという気持ちがよくわかります。
熊川宿には忙しい日常生活と切り離された、なんというかリフレッシュできる空気が流れている。

先日、宿泊施設の館銘板を制作していただいている鉄工作家の方が熊川にいらっしゃったので、
小一時間集落を一緒に歩きました。
鉄工作家の方は、到着されてから熊川宿を出られるまでしきりに、
「風通しがいい!」と熊川宿を評していらっしゃいました。

「風通しがいい!」
熊川宿を表現するにはとてもいい言葉だなと思いました。
熊川宿は若狭地方の最も奥まったところにある集落の一つで、細い谷間にあります。
すぐ側には近畿地方で最も水質のいい一級河川「北川」が流れています。
谷間を抜ける風は北川の上を通り、いつも熊川宿に清々しい空気をもたらしてくれます。
また熊川宿は、周辺に土地に少なかったため、農業を営む家が少なく、街道を通る旅人を相手に商売をしてきた街でした。
このため近隣の集落だけではなく、京都や大阪からも商売に挑戦するため人が集まってきていたそうです。
そのせいか熊川は、田舎の割には外からやってくる人を受け入れなれているというか、
外の人に対して寛容な気質をもっているそうです。
こういった意味でも若狭地方の中では風通しがいい集落なのかもしれません。

その場所のもつ歴史や、雰囲気はその場所に暮らす人に大きな影響を与えていると感じます。
SOL’S COFFEEさんを紹介するときはいつも「東京の蔵前から来てくださるんです!」とあえて「蔵前」を強調しています。
恵比寿でも日本橋でも新宿でもなく「蔵前」です。
東京の土地勘がある人に対してはあえて「蔵前村からです」と話しています(蔵前の方すいません笑)。
蔵前のまちの人から愛されているSOL’S COFFEEさんのお店にはいつも親しみやすい空気を感じます。
家庭的という言葉とはちょっと違うんですが、なんというか長年続いている町の食堂のような親しみやすです。
中島さんをはじめとするSOL’S COFFEEさんのスタッフのみなさん、
そしてふらりと訪れる常連さんが作られているいい雰囲気があると感じています。
この親しみやすさは過疎化が進む熊川宿にこそ必要なのではと思ったことがお声かけさせてもらった一番の理由です。

若狭には、北陸のなかでも素朴で肩肘張らない気質があります。
蔵前のちょっと下町な感じはこの気質と通じるものがあると思っています。
また古いものと新しいものが絶妙にミックスされている蔵前の雰囲気は、若狭のまちづくりのいいお手本になるとも思っています。

宿泊施設の設計でも親しみやすさや落ち着きのある場つくりに力を入れました。
小さめの間口やむき出しの土壁、落ち着いた色には、派手さはないけど若狭らしい素朴さが出せているのでは思っています。

若狭町の方々はみなさんSOL’S COFFEEさんが熊川宿に来られることを楽しみにしています。
SOL’S COFFEEさんが来られることを周知し始めてから、フライング気味に多くの方が様子を見に来られています。
来られる方の多くが「コーヒーをいつも飲むわけじゃないけどここのは飲んでみたい。」とか
「パンを買えるがとても嬉しい!」とか
「コーヒー豆ってここで焼けるの?!」とか
素直な感想を言われていて、聞いているだけでこっちが楽しくなってきます。
中には蔵前のお店までわざわざ見に行ってくださった方がいらっしゃったくらいです。

熊川宿の土蔵が改修され、あたらしく焙煎機が入って、
SOL’S COFFEEさんのお店ができてくるのを見ていると、蔵前と若狭の文化が出会う宿場町ならではの場所になるのではとわくわくしてきます。
SOL’S COFFEEさんのある熊川宿、日常にSOL’S COFFEEさんがある暮らしを
今から楽しみにしつつお返事とさせてもらいます。
中島さん、よろしくお願いいたします。
