こんにちは、店主のさかいです。
先日からスタートしたこちらの「URAKURAさん、いらっしゃーい」も、早くも3回目となりました。
「どういうお店にしようと思っているのか」ということを、「URAKURAにいそうな人たち」との語らいから皆さんに想像していただくことを目的としたこちらの連載も今回でいったん一区切りではありますが、人の話を聞くのが大好きなわたしの趣味と実益を兼ねてもいるのでクラファンがおわったあとも継続できたらと思っています。
こんな話が聞きたいとか、わたしの話を聞いてほしいなどあれば、お気軽にリクエストください。
ということで本日、3回目のゲストは韮崎界隈の有名人、イロハクラフトの千葉さんにお話を伺いました。
それでは千葉さん、よろしくお願いします。
こんにちは、韮崎市で建築の設計施工の会社、イロハクラフトを運営している千葉です。
さかい:千葉さんといえば、韮崎界隈に限らず知る人も多い方ですが、そもそも建築を目指したきっかけは何ですか?
千葉さん:私が小学校4年生の時に家の増築工事があって、当時それを見るのが楽しくて学校から帰ると毎日大工さんの仕事を見ていました。だから最初は大工さんにあこがれていたんですが、早い段階からやりたいことははっきりしていましたね。
大学で建築を学んで、そのあと就職のタイミングで山梨に戻ってきて、29歳の時に独立してイロハクラフトを立ち上げました。
今はどちらかというとリノベーションなど「今あるものをいかに利活用するか」という取り組みに力を入れています。
さかい:すぐに戻るくらい韮崎がお好きだったんですね?
千葉さん:そうですね、韮崎や山梨のいい意味でゆるい空気感が好きです。逆に都会もそうですが、カッチリした空気感は少し苦手です。
リノベに力を入れていることには、どんな思いがあるんですか?
千葉さん:今の日本はスクラップ&ビルドが基本で、30年周期ぐらいで作っては壊すを繰り返していますが、ヨーロッパなどではむしろ100年を超える建物に価値が出てくるんです。
たとえばこのアメリカヤビルの鉄窓一つとっても、これは当時の職人さんがひとつひとつ手作りしていたもので、今の工場で作られる窓とは違って開けるときにガラガラと大きな音がするけども、そういうものには手仕事のぬくもりが残ると思うんです。
時間の経過で出てくる味も含めて大事にしたいし、壊したくないと思う。手を加えながら残していくことが大事かなと思っています。
だからURAKURAも江戸時代の末期からある蔵を使うことにとても共感しています。
さかい:先日も、蔵にある部材のどれを何センチに切って、どう再利用するかというのを蔵まで来て設計をしていただきました。お金がないのでそれを実際にDIYするのは私たちなのでイロハクラフトさんには一銭にもならない話なのに。そういう伴奏をしてくださるのは本当にありがたいです。
千葉さん:オープンしたら1杯ごちそうしてくれるかなと思って考えました。笑
さかい:がんばります。笑 窓枠もそうですが、人の手仕事が感じられるものがお好きなんですね。
そこに人の暮らしがあったことが感じられるような、歴史があるものが好きです。
千葉さん:街でも、最近作られたようなきれいな街より歴史のある町が好きです。旅行先ではタイのチェンマイが好きです。日本でいう京都みたいな町で、遺跡や寺院がたくさんあって、食べ物がおいしいんです。お酒の飲み方も開放的で、暑いからビールに氷入れて飲んだりしてるんですよ。
さかい:千葉さんはどういうお酒が好きですか?
千葉さん:なんでも好きですが、特に好きなのはウイスキーのハイボール、日本酒。ビールも好きです。
最近は家で懐メロとかを聞きながら飲むのが好きですね。Youtubeで映像付きで楽しんだり。外で飲むときも、ショーとかを見ながら飲むのが好きです。例えば旅行先で伝統芸能を見ながら飲んだりとか。
さかい:時間や空間を楽しむような飲み方が好きなんですね。わたしも家で飲むときは本を読んだり、お気に入りの食器を眺めたり。程よく酔っているときの方が自分の時間に没入できる気がします。
千葉さん:なんかわかる気がします。でも僕の場合、本はダメですね。笑
酔ってると何度もページを戻ってしまうんです。酔ってカラオケに行くと、同じ曲を何度も入れてよく周りに突っ込まれます。
千葉さんと言えば、この韮崎駅前界隈の復興の立役者としても知られていますが、再開発に携わるきっかけはありましたか?
千葉さん:きっかけはこのアメリカヤビルですね。学生のころから駅のホームから見えるアメリカヤビルと、その後ろに立っている平和観音像が韮崎を象徴する景色のように思えて気になっていて「この建物をリノベーションしたらおもしろいだろうな」とずっと思っていました。
その話を色々な人にしているうちに、縁がつながってオーナーさんと会うことができたのですが、当時アメリカヤビルは15年ぐらい放置されて廃墟と化していたんです。老朽化して雨漏りもするし、モルタルもはがれているし、オーナーさんもどう使っていいかわからず悩んでいて壊そうと思っていたところだった。借りたい人と、困っている人がいて、うまくマッチングした感じです。
さかい:駅から見えるアメリカヤビルが気になるという話は今もよく聞きますね。同じ気持ちをリノベ後も変わらず抱かせられるのはすごくすてきなことだと思います。
千葉さん:半世紀を経てもなお、光が灯るっていいことだよね。
そもそもこのアメリカヤビルとは、元々なんだったんですか?
千葉さん:1階が食堂とお土産屋さん、2階は喫茶店、3階は大家さんの住居、4・5階は旅館という「複合施設」だったんですが、そのさらに前は平屋建てのおみやげ物屋さんでした。
その当時、この商店街はすごくにぎわっていて、もっと人を呼ぶためにと温泉を掘り始めたら鉱泉が湧き出て、その水を凍らせて味付けした「アイスボンボンキャンディー」という商品を作って売ったところ、これがめちゃくちゃ大ヒット商品になったんです。山梨の一定以上の世代の人はみんな知っているお菓子で、そのヒットのおかげで5階建てのビルになったと聞いています。実は今これの復刻版を作ろうと動いてるんですよ。
当時のアメリカヤさんの写真集を見せていただきました。
紹介をカットしてますが、今回のインタビューのおともは「メゾンペリエシック」のレモヒートとロゼリーニです。
今は新しいお店がどんどんできて、当時のにぎわいが戻ってきているように感じます。変化はいつ頃から起き始めたのでしょうか?
千葉さん:アメリカヤを作って1年半後に、アメリカヤ横丁を作ったころからでしょうか。
移住してきた人がおもしろいお店を作ったり、地元の人たちも負けじとお店を作ったり、今まで積み上げてきたものがあった上でお互いにいい刺激になっているのではないでしょうか。若い人たちの意気込みが共感を得たのかと思います。
さかい:新しいお店が入ることに、例えば元々の建物のオーナーさんからはどういうお声がありますか?
千葉さん:実はアメリカヤ横丁のあの建物は取り壊される予定だったんです。でも昭和初期の雰囲気がまるで時間が止まったようにそのまま残る建物を見て、壊してほしくないと思ったんです。そこでオーナーさんに直談判したのですが、アメリカヤの事例もあったのでOKがもらえたと思っています。
あとはイロハクラフトが建築屋さんなのも強みですね。老朽化している建物なので何があってもおかしくないが、貸す方としてはトラブルが一番こわい。「雨漏りも、構造的な補強もするし、迷惑はかけないので貸してください」という話しをして、そこも含めて全部を引き受けられたのが決め手だったように思います。
さかい:そのころは一企業としての取り組みだったかと思いますが、今は行政との連携も積極的にされている印象です。そういった取り組みはいつから始まったんですか?
千葉さん:もともと街づくりとかは全然考えてなかったんです。アメリカヤのビルをリノベしたことをきっかけに行政の方も期待してくれたり喜んでくれて、そこから声がかかるようになった気がします。今では街づくりの横のつながりもしっかりできて協力体制ができています。
さかい:てっきり「生まれ育った韮崎をどうにかしよう!」という思いが元からあったのかなと思ってました。
千葉さん:ぜんぜん!とにかくアメリカヤの建物が大好きだったんです。むしろかたい雰囲気は苦手なので市役所に入ったこともないぐらいでした。笑
ますます盛り上がる韮崎駅前ですが、今後どんな風になったらいいなと思いますか?
千葉さん:ぼくはおいしいものを食べに行くことが好きで、特に海鮮丼が好きなんです。だからこの辺においしい海鮮丼屋さんができたらいいなと思ってます。
さかい:私も寿司が大好物なのでとても同意します。山梨は「海なし県」なのに魚の鮮度がいい印象です。静岡の方からのルートがあるからですかね。
千葉さん:さかいさん、お寿司屋さんやったらいいじゃないですか。笑
そうですね、山梨って実は【マグロの消費量・日本一】なんですよ。魚好きな人が多いんです。海鮮丼屋をやりたい人を早急に探しましょう。
さかい:ところで温泉が沸いたという話はその後どうなりましたか?先日、NEXT MOUNTAINの関根さんと「この辺でお風呂屋さんをやる人がいたらいいね」と話していたんです。
千葉さん:実はこのアメリカヤビルって水道を引いてなくて、全部その湧き水でまかなってるんです。「延命の水」と名付けていて、かつてのアメリカヤでは1階の店頭に小便小僧を置いて水を無料で提供していたんです。近所の子供たちが水筒に入れて持って帰ったりしていました。今もお水は無料で解放しているのでぜひご利用ください。
海鮮丼屋ができて、温泉に入れたら最高ですね。あとは劇場ができたら最高だな。
チャレンジを受け入れる街、韮崎
さかい:甲府市に新しい商業エリアができ、北杜市でも移住者が増えていると聞きます。山梨がどんどん活気づいている印象です。今後この街にもどうなっていってほしいですか?
千葉さん:「チャレンジする街」になったらいいなと思います。チャレンジしやすい街になって、いろんなチャレンジをしたい人が集まってくれたらいいなと。
わたし的には、まとまった空き家をまるっとリノベーションして、リノベーション村を作りたいなと思っています。たとえば「アメリカヤ村」とか?移住したい人がそこに住んだり商売をする場になればいいなと思っています。
さかい:韮崎にはすでにウェルカムな空気感があるように思います。
実は私もお店をやるかどうか去年の段階ではまだ迷っていたんです。でも移住の下見で街をうろうろしてるときに会う人たちの空気感で、やってもいいんじゃないかな?と思えてきました。そういう気持ちにさせてくれたのは街の雰囲気のおかげです。
千葉さん:それはありますね。みんなチャレンジャーだから。「やりたい」を応援する街ですね。
さかい:起業って、難しいことやネガティブなことを言われがちだと思うんです。でもそうじゃなく「やりたいことがあるなら、それはやっていいことなんだよ」と背中を押された気がしました。いろんな人が応援して、協力してくれているので、お店をやる側もちゃんとやりたいと思えますし。期待に応えたくなる街ですね。
千葉さん:URAKURAさんは、本棚や相撲・プロレス観戦など、さかいさんの好きなことが詰め込まれた、いい時間の流れるお店になりそうな予感がします。
さかい:さしあたり近所のプロレス好きと相撲好きが来てくれるお店になりたいです。
最後になにか宣伝はありますか?
千葉さん:そうですね…アイスボンボンキャンディーを復活させたいです!
さかい:そっちですか?!何はともあれ本日はありがとうございました!
本日お話をうかがったイロハクラフトさんの情報はこちら